「同労者」第15号(2000年12月)                          目次に戻る

信仰良書

 − 神 へ の 道  (8) −
D.L.ムーディー 著   仙台聖泉キリスト教会 山田 大 訳


  マザーズタッチ

 あの悲惨だった南北戦争の最中、一人の母親に息子がウィルダネス(訳注:南北戦争の激
戦地、ヴァージニア州北東部)の戦いで負傷したとの知らせが届きました。当時陸軍省から、
女性はそれ以上戦線を超えて中へ入ってはならない、との命令が出されていましたが、彼女は
取るものもとりあえず汽車に乗り込み息子に会いに向かいました。母の愛は軍の命令をものと
もせず、涙ながらの懇願をもってなんとかウィルダネスへの戦線を通過できました。そしてつい
に彼女は息子のいる病院を見つけたのです。彼女はすぐに医者のところへ行き、病室で息子
を看病して良いかとたずねました。医者は、「たった今息子さんを眠らせたところです。病状は
とても深刻で、もしあなたが彼を起こしてしまったら、お母さんに会うことの興奮があまりに大き
くて命に関わる危険があります。私から彼にお母さんが来ておられることを話しますので、彼に
このことが徐々に伝わるように病室の外でもうしばらくお待ちになってはいかがでしょう。」と言
いました。すると母親は医者の顔を見つめながらこう訴えたのです。「先生。ですが逆にもしあ
の子がもう目を覚まさなかったとしたら、私は生きて息子に会えないことになるのです。どうか
息子のそばに座ることを許してください。決して話しかけたりしませんから。」「話しかけないの
ならいいでしょう。」医者は許可しました。彼女はそっと息子のベッドに近づき、顔を覗き込みま
した。どんなにこの時を待ち焦がれたことでしょう。息子の姿を見ることができて、彼女の目ま
でがどんなに喜びに満ちていたことでしょう。顔を近づけるにつれて、彼女は我慢できなくなっ
て、その優しい愛情のこもった手を息子のおでこに乗せました。その手が額に触れたとたん、
彼は目をつぶったまま叫びました。「お母さん。来てくれたんだね!」息子は母の愛に満ちた手
の感触を知っていました。そこには愛と深い思いやりが込められていました。

  イエスの優しさ

 ああ。罪人よ。もしあなたがイエスの愛の御手を感じるなら、それが主のものであることを認
識するでしょう。それはなんと優しさに満ちていることでしょう。この世はあなたに対して冷酷か
も知れません。しかしキリストは決してそうではありません。あなたは世界中で彼以上の友を見
出すことは絶対にできません。あなたがなすべきことは、今日主のもとへ行くことだけなので
す。主の愛の御腕に抱かれ、愛の御手で触れていただきましょう。そうすれば主はあなたを全
能の御力で包んでくださいます。主はあなたを守り、あなたの心を愛と優しさで満たしてください
ます。
 こう尋ねる人もいるでしょう。「主のもとへ行くにはどうしたら良いですか。」その答えは、ただ
あなたのお母さんのところへいくようにすれば良いのです。あなたはお母さんをひどく傷つけた
り、彼女に対してとても悪いことをしたことがありますか。もしあるならあなたは彼女のところへ
行って、「お母さん。赦してください。」と言いなさい。そしてキリストに対しても同じようにするの
です。今日主のところへ行き、今まで主を愛していなかったこと、神と正しい関係でなかったこ
とを告げ、罪を告白しなさい。あなたはどんなに速やかに神があなたを祝福してくださるかを知
るでしょう。




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