「同労者」第16号(2001年1月)
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信仰良書
私はもう一つの出来事を思い出します。それは、軍法会議にかけられ銃殺刑を言い渡された
青年の話です。その知らせを聞いて、両親は悲しみで心が引き裂かれそうでした。その家には 小さな娘がおり、彼女はアブラハム・リンカーンの伝記を読んだことがありました。その子は両 親に、「ねえ。お父さんとお母さんがどんなにお兄ちゃんを愛しているか、もしリンカーンが知っ たらお兄ちゃんを死刑になんかさせないでしょうに。」と言いました。彼女は、お父さんにワシン トンへ行ってお兄ちゃんの命乞いをしてほしかったのです。しかしお父さんは言いました。「無 駄だよ。法律は変わらないさ。軍法会議の判決に対して、一人二人の人が赦免を願ったが、 聞き入れられず命令は執行された。大統領も干渉することはない。軍法会議で判決が下され れば、その結果を受け入れるしかないんだよ。」
両親は息子が赦免されるかもしれないという思いを抱く事は出来なかったようです。が、その
娘は強い希望を持っていました。彼女はヴァーモント(訳注:米国北東部の州。州都Montpelier からWashington D.C.までは直線距離で約700km)から汽車に乗り、ワシントンへ向かいました。 ホワイトハウスに着くと、兵士達ははじめ彼女を中へ入らせませんでしたが、その哀れな話を 聞くと通らせてくれました。次に秘書室へ行くと、やはり大統領秘書は大統領のプライベートオ フィスへの立ち入りを禁じましたが、彼女の話を聞くと心を打たれ、中へ入れてくれました。
ついにリンカーンの部屋へ入ると、そこには合衆国の上院議員や将軍、司令官、主な政治家
たちがいました。彼らは戦争について重要な会議をしているところでしたが、大統領は入口の ところに立っている子供にふと目をやり、何を望んでいるのか尋ねました。彼女はまっすぐに大 統領のところへ行き、例の話を自分自身の言葉で伝えました。大統領も一人の父親でした。大 粒の涙がアブラハム・リンカーンの頬を流れ落ちたのです。彼は、すぐにその子の兄をワシント ンへ来させるようにとの緊急指令書を陸軍へ送りました。その青年が来ると、大統領は彼を赦 免し、30日の休暇を与え、両親の心を元気付けるように妹と共に家へ帰らせました。
あなたはキリストのところへ行く方法を知りたいですか。それは丁度この少女がリンカーンの
ところへ行ったようにすればよいのです。もしかするとあなたの持っているのは、彼女のものの ようではなく、もっと暗い話かもしれません。それでもそれをすべて告白しなさい。一つも包み隠 すことのないように。リンカーンが少女の話を聞いて同情しそれに答えたのなら、主イエスがあ なたの祈りに答えてくださらないはずがあるでしょうか。アブラハム・リンカーンが、いやこの地 上に生きたどんな人でも、キリストと同じくらいの憐れみの心を持っているでしょうか。いいえ。 他の誰もがあなたの話に無関心でも、キリストは心を動かされなさるのです。他の誰もが無慈 悲な時でも、彼だけは慈悲深くあられるのです。他の誰もがそうでなくとも彼だけは憐れみの心 を持っておられるのです。もしあなたがまっすぐにキリストのところへ行き、罪を告白し、願いを 訴えるなら、彼はあなたを救って下さるのです。 |