「同労者」第17号(2001年2月)
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信仰良書
数年前、ある若者がイギリスを離れてアメリカへ移住しました。彼はイギリス人でしたが帰化
してアメリカの市民権を得たのです。しかし2、3年すると彼は不安と満たされない思いを感じる ようになり、今度はキューバへ渡りました。それから間もなく、そこで内紛が勃発します。1867 年のことなのですが、なんとこの人がスパイの容疑でスペイン政府に逮捕されてしまったので す。彼は軍法会議にかけられ、有罪の判決を受け、銃殺刑が言い渡されました。裁判のすべ てがスペイン語でなされていたので、この哀れな人は何が行われているのかわかりませんでし た。
有罪であり銃殺刑を宣告するとの判決を聞かされた時、彼はアメリカとイギリスの領事へ使
いを送り、自らの無罪を証明し保護を求めるために彼等にすべての真相を提示しました。領事 たちはその申し立てを審理し、このスペイン人官吏に銃殺刑を宣告された人は、実は完全に 無罪であることを見出しました。彼らはスペイン人の将軍のところへ行き言いました。「あなた が死刑を宣告したこの男は潔白です。彼には何の罪も見出せません。」ところがスペイン人の 将軍は、「彼は我々の法律で裁かれ、罪があると認められました。死刑にされなければなりま せん。」と答えたのです。そこには国際電話なども無く、領事たちは母国の政府に相談すること も出来ませんでした。
とうとう彼が処刑される朝が来ました。彼は荷馬車の上で自分の棺桶にすわり、処刑場へ引
かれて行きました。墓穴が掘られ、棺桶が荷台から降ろされます。彼はその上に立たせられ、 黒い帽子で顔を覆われました。兵士たちは「打て」の命令を待っています。(つづく) |