「同労者」第21号(2001年6月)                          目次に戻る

ショートコラムねだ

− 大久保彦左衛門 −

 表題の人物は、過ぎし日の合戦の手柄話を、繰り返し聞かせる人物であったという。昔話も
一度や二度なら聞かせられるのも悪くはないが、耳にタコができるほど聞かせられると辟易
(へきえき)するのが常である。この人は、歴史上の人物だが、どうも本、講談の類で尾ひれが
ついておもしろおかしく語られた話が伝わっている。徳川の将軍の方は、このうるさい年寄りた
ち(この人だけでなかった)を柔らかく扱って・・要するに死ぬまで待って・・あげたらしい。その
理由は、その時の徳川幕府が彼らの功績の上に存在することを認めていたためであると思わ
れる。
 デサントスポーツ科学振興財団という聞き慣れない名前の財団法人がある。その財団はス
ポーツ医学や医療、リハビリなど人間工学といわれる分野を取り扱っている。その機関誌「デ
サントスポーツ科学」に「高齢者における筋力および持久的トレーニングの併用が下肢筋機能
と骨構造に及ぼす影響―(長い副題)―」という長ったらしい名前の論文が載せられていた。こ
の論文の中に、寝たきりおよび痴呆性要介護者の推定数は、2025年には520万人に達す
ると述べられている。人ごとではない。寝た切りにはなりたくないものだ。その中で、"年寄りも
仕事から解放されない方がよい。"と著者は言う。そして、"適切なトレーニングは筋肉を回復さ
せ、要介護に至る時期を遅らせる。殊に下肢(足の)筋肉トレニーングが大切"なのだそうであ
る。
 この論文にこういうヒントが上げられている。「加齢(年をとる)による身体活動の減少は活力
を低下させ心理的な老いを自覚させる。このような老いを感じることが日常生活での活動量を
さらに低下させ、介護が必要になる時期を早める。だれそれ(文献を引用し)は、社会活動に
積極的に参加している高齢者とそうでない者を比較し、社会活動に積極的に参加している者
は活動量が高く、活動能力も優れている。」と報告している。お年寄りを愛して、何もさせず面
倒を見てあげるとかえってよくない。家に帰らぬ子供たちを「かいしょなしめ!(甲斐性無=役
立たず)」と怒りながらも、自分たちだけで生活している年寄りの方が、寝たきりにならないとう
ことだ。手の掛かる寝たきりの人も口は動く。いつまでも長生きして、口だけ大久保彦左衛門さ
れては困りものである。
 実際の体の問題を述べたが、霊的なことがらはそれと類似しているものだ。教会の中には
「霊的寝たきりの人」が生まれるかも知れない。年が上がって来たら早く引っ込むのがよいの
であろうが、上手に他の仕事を担うよう切り替えていくことを工夫せねばなるまい。さもないと、
早く寝たきりになり、かえって迷惑をかけるようになるかも知れないと思うこの頃である。


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