「同労者」第22号(2001年7月)                          目次に戻る

ショートコラムねだ

− 歯ブラシをみがく話 −

 歯ブラシは歯をみがくものと相場は決まっている。歯ブラシには歯磨き粉なるものをくっつけ
て歯をみがくのであるが、その歯磨き粉が歯ブラシの間に固まってくっついていることがよくあ
る。歯をみがいたあと毎回とことん丁寧に歯磨き粉を洗い落としておけば良いのかも知れない
が、朝出かけるときなぞ、歯磨きそのものもほんの形ばかりしかしないのが常である。それは
私一人ではあるまい。だから洗い残しの歯磨き粉が歯ブラシにくっついて固まるのである。
 自分の磨いた歯磨き粉なら、前のものが少々残っていてもへっちゃらである。
 たまにその固まった歯磨き粉をよく洗い落とそうと思うとこれがなかなかとれない。
 コップに水を入れて、歯ブラシをその水に長い時間漬けておき、固まった歯磨き粉が柔らかく
なっていることを期待するも、当てが外れる。子どもの頃使った歯磨き粉は、缶に入った"粉"
であった。やがて"半練り"なるものが出現し、ついでチューブ入り練り歯磨きなるものの登場と
なった。今の歯磨き粉はもともと柔らかくできている。それが歯ブラシにくっつくのであるから、
水につけて少々柔らかくなったからといって、すなおに歯ブラシからさようならしてくれない。い
やだここにいる、とばかりにしぶとく歯ブラシにしがみついている。
 口の中に入れる歯ブラシであるから、そうやたらな洗剤なぞ使うまい。無理に爪の先で奥ま
でこすろうとすると、歯ブラシの毛が曲がってしまい"はみだし"とあいなる。
 ではどうするか。歯ブラシ同様歯の掃除に一役買っている楊枝がある。水で洗い流しなが
ら、楊枝で歯ブラシの奥をこすると固まった歯磨き粉がよくとれる。
 楊枝とは歯ブラシをみがくものと心得たり。

 日常よく使うもので、役に立つものでありながら、害になるものがある。
 囲碁をする人は、熱中すると頭のなかが"ごいしごいし(碁石碁石)する"状態になる。これは
すこしやった人でないと分からない世界かも知れないが。将棋その他のゲームなどでも共通す
る。新聞やテレビにも似た働きがありそうである。それらは一旦生活習慣となってしまうと、歯
ブラシについた歯磨き粉のようになかなか生活から取れないし、やめてもすぐまた元通りにな
る。

 それらは霊性を低下させる。この世にどっぷり浸かりながら、実りある祈りをすることは難し
い。どうやって役に立つ範囲にとどめ、その呪縛を逃れるか。それが問題である。歯ブラシを
楊枝でみがくような、うまい手段はありませんかねえ。
 


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