「同労者」第24号(2001年9月)                      目次に戻る 

Q&Aルーム

 信仰生活のこと、教理上の疑問など様々なことについて、誰かに聞いてみたいことがおきてく
ると思います。教会の先生に伺うことは勿論一番ですが、それを独り占めしないで、すこし公開
してください。それを皆で考えると、きっと皆さんにとって益になると思います。
質問の送付先は巻末にあります。



 今月もまず先月の質問の回答例を取りあげます。

先回の質問の回答例(作成者:野澤)
 先月(8月号)の質問は
1.天使の働きについて救拯史的観点から述べてください。
でした。
<天使とはどのようなものか>
 はじめに天使とはどのようなものかを解説します。
 天使は霊です。聖書が示している「霊」は、神、人間、天使、悪霊です。霊は人格であって
霊的な自由意志を持ち、行為に対しては罪と義、その存在に対して汚れと聖の区別を持って
いるものです。名前が示しているとおり、神の使い、神の僕としての働きをします。自由意志を
もっていますから、人間同様神の意志に背いて罪を犯す可能性をもっています。実際に罪を犯
した天使が悪霊であると考えられています。その頭がサタン(悪魔)です。
 旧約聖書には、主の使い、天使、神の使い、御使い、人、などと呼ばれている方で、明らか
に神(エホバ、主)である方の顕現と思われる箇所が多数あります。この方は主ご自身ですか
ら、質問の意図する「天使」ではありません。
 天使について聖書の記述を拾うと上述のことも含め以下のようなことが分かります。

・天使の呼び方には、新改約聖書の呼び方で、「天使」(詩篇138:1)の他に「御使い」(創世記19:
1)、「主の使い」(ルカ1:11)、「神の使い」(創世記28:12)などがあります。
・天使は霊であって、肉体がありません。従って「魂」もありません。天使は霊ですから人格で
す。
「御使いはみな、仕える霊であって、救いの相続者となる人々に仕えるため遣わされたのでは
ありませんか。」(ヘブル1:14)「霊にはこんな肉や骨はありません。」(ルカ24:39) 

・天使は結婚をしません。恐らく性(男女の区別)もないものと思われます。人間が地に存在し
ているというのと同じ意味でいって、天使は働きをするとき以外は天に存在しています。
「復活の時には、人はめとることも、とつぐこともなく、天の御使いたちのようです。」(マタイ22:30)

・天使は死ぬことがありません。
「彼らはもう死ぬことができないからです。彼らは御使いのようであり、また、復活の子として神
の子どもだからです。」(ルカ20:36) 

・天使も「神の子ども」と呼ばれています。(ルカ20:36) ヨブ記2章1節に記されている「神の子ら」
は天使たちのことを指しています。

・しかし、天使は被造物であって、先在者である「神の子」ではありません。従って天使は救わ
れて神の子どもとされた人間と同じ意味で神の子どもなのです。
「なぜなら、万物は御子にあって造られたからです。天にあるもの、地にあるもの、見えるも
の、また見えないもの、王座も主権も支配も権威も、すべて御子によって造られたのです。万
物は、御子によって造られ、御子のために造られたのです。」(コロサイ1:16) 

・天使は大勢います。
「多くの天の軍勢が現われて、神を賛美し」(ルカ2:13)、「わたしが父にお願いして、十二軍団より
も多くの御使いを、今わたしの配下に置いていただくことができないとでも思うのですか。」(マタイ
26:53)、「彼が見ると、なんと、火の馬と戦車がエリシャを取り巻いて山に満ちていた。」(列王記
U6:17)  

・天使はたったひとりでも大きい業ができます。
「主の使いが出て行って、アッシリヤの陣営で、十八万五千人を打ち殺した。人々が翌朝早く
起きて見ると、なんと、彼らはみな、死体となっていた。」(イザヤ37:36) その他(使徒5:19、12:7、
23)など。

・天使には大きな権限が与えられています。
「御使いたちは、勢いにも力にもまさっているにもかかわらず、主の御前に彼らをそしって訴え
ることはしません。」(ペテロU 2:11) 

・天使は多くのことを知っていますが全知ではありません。
「その日、その時がいつであるかは、だれも知りません。天の御使いたちも子も知りません。」
(マルコ13:32)

・天使は名前をもっています。
「『ガブリエルよ。この人に、その幻を悟らせよ。』と呼びかけて言っている人の声を聞いた。」
(ダニエル8:16、10:21、12:1、ルカ1:19、26、…) 

・天使には長がいます。天使の長はひとりではありません。(ダニエル10:13) 従って、断定はでき
ませんが、軍隊のように組織化されている可能性があります。「天の軍勢」(ルカ2:13)という表現
もそれを示唆しています。
「御使いのかしらミカエルは、モーセのからだについて、悪魔と論じ、…」(ユダ9)(テサロニケU 4:
16)

・天使は礼拝の対象ではありません。
「そこで、私は彼を拝もうとして、その足もとにひれ伏した。すると、彼は私に言った。『いけませ
ん。私は、あなたや、イエスのあかしを堅く保っているあなたの兄弟たちと同じしもべです。神を
拝みなさい。イエスのあかしは預言の霊です。』」(黙示19:10)

・天使は人間が救われることを喜びます。
「あなたがたに言いますが、それと同じように、ひとりの罪人が悔い改めるなら、神の御使いた
ちに喜びがわき起こるのです。」(ルカ15:10)

<救拯史における天使の働き>
 次に質問の意図である救拯史における天使の働きについて考察しましょう。
 天使は創世の初めから今に至るまで神の僕として、神の聖業の実行にあずかってきたもの
と思われますが、人間の前に姿を見せるのはごく限られた期間に集中しています。アブラハ
ム、ダビデ、エリヤにも主の使いが現れていますが、主なものはダニエルに対してと、イエスの
降誕から昇天までの期間です。これから起きることについては、イエスのご再臨の時に天使が
働きをすることが記されています。
 神の子らである人間たちの真の戦いは「私たちの格闘は血肉に対するものではなく、主権、
力、この暗やみの世界の支配者たち、また、天にいるもろもろの悪霊に対するもの」(エペソ6:
12)であるのと同様に、天使たちも悪霊たちとの戦いをしていることがダニエル書に記されてい
ます。
 「ちょうどそのとき、一つの手が私に触れ、私のひざと手をゆさぶった。それから彼は私に言
った。「神に愛されている人ダニエルよ。私が今から語ることばをよくわきまえよ。そこに立ち上
がれ。私は今、あなたに遣わされたのだ。」彼が、このことばを私に語ったとき、私は震えなが
ら立ち上がった。彼は私に言った。「恐れるな。ダニエル。あなたが心を定めて悟ろうとし、あな
たの神の前でへりくだろうと決めたその初めの日から、あなたのことばは聞かれているから
だ。私が来たのは、あなたのことばのためだ。ペルシヤの国の君が二十一日間、私に向かっ
て立っていたが、そこに、第一の君のひとり、ミカエルが私を助けに来てくれたので、私は彼を
ペルシヤの王たちのところに残しておき、終わりの日にあなたの民に起こることを悟らせるた
めに来たのだ。なお、その日についての幻があるのだが。」彼が私にこのようなことを語ってい
る間、私はうつむいていて、何も言えなかった。ちょうどそのとき、人の姿をとった者が、私のく
ちびるに触れた。それで、私は口を開いて話し出し、私に向かって立っていた者に言った。「わ
が主よ。この幻によって、私は苦痛に襲われ、力を失いました。わが主のしもべが、どうしてわ
が主と話せましょう。私には、もはや、力もうせてしまい、息も残っていないのです。」すると、人
間のように見える者が、再び私に触れ、私を力づけて、言った。「神に愛されている人よ。恐れ
るな。安心せよ。強くあれ。強くあれ。」彼が私にこう言ったとき、私は奮い立って言った。「わが
主よ。お話しください。あなたは私を力づけてくださいましたから。」そこで、彼は言った。「私
が、なぜあなたのところに来たかを知っているか。今は、ペルシヤの君と戦うために帰って行
く。私が出かけると、見よ、ギリシヤの君がやって来る。しかし、真理の書に書かれていること
を、あなたに知らせよう。あなたがたの君ミカエルのほかには、私とともに奮い立って、彼らに
立ち向かう者はひとりもいない。」(ダニエル10:10〜21) 霊の世界における悪霊との戦い、これが
天使の働きの本質なのです。
 天使が現れて働いたことに関して聖書に記されていることを拾い上げてみますと、旧約聖書
には、ソドムの滅亡の時、ロトとふたりの娘を救いだしソドムを滅ぼしたこと(創世19:1〜29)、ダ
ビデがイスラエルの人口調査をした時彼に対する裁きを実行したこと(サムエルU 24:16〜17)、
エリヤがホレブ山に行くとき彼を助けたこと(列王T 19:1〜18)、ダニエルが獅子の穴に入れら
れた時彼を助けたこと(ダニエル6:22)、ダニエルに黙示を示したこと(ダニエル8:16、9:21、10:1〜12:
13)などがあります。新約聖書には、イエス・キリストの降誕に関して天使が働いたことが記され
ています。ゼカリヤにバプテスマのヨハネの誕生を告げたこと(ルカ1:5〜23)、マリヤにイエスの
母となることを告げ、マリヤの了解を取り付けたこと(ルカ1:26〜38)、ヨセフにマリヤのお腹の子
は神の子救い主であることを告げたこと(マタイ1:20)、イエスのお生まれになったとき、羊飼い達
にそれを告げたこと(ルカ2:8〜20)、主の復活のときそれを弟子達に告げたこと(マタイ28:1〜7、マ
ルコ16:1〜7、ルカ24:1〜8)、などです。
 現在、私たちの間で天使がどのように働いているのかは、聖書には書かれていません。聖霊
が私たちの心(魂)の内に住まわれて、直接私たちに語られるためと思われます。
 未来については、イエスは御再臨の時、天使を引き連れておいでになります。
「そのことは、主イエスが、炎の中に、力ある御使いたちを従えて天から現われるときに起こり
ます。」(テサロニケU 1:7〜8) そしてキリストの再臨のとき、救われている人々を世界中から集
める仕事を、天使がすることに決められています。「人の子は大きなラッパの響きとともに、御
使いたちを遣わします。すると御使いたちは、天の果てから果てまで、四方からその選びの民
を集めます。」(マタイ24:31) 

今月の質問
1.先月の質問の回答例にある神(エホバ、主)の顕現の実例を述べてください。
今回もまた、まずご自分で回答を考えてみて下さい。




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