「同労者」第28号(2002年1月)                          目次に戻る

信仰良書

 − 神 へ の 道  (21) 
D.L.ムーディー 著   仙台聖泉キリスト教会 山田 大 訳

 ・例証
  わかりやすく例をあげてみましょう。仮に私が父か母から受け継いだ結核で死にかけている
とします。(訳注:これが書かれた1884年当時、結核菌は2年前に発見されたばかりでまだ治療
法も十分には確立されていなかったと思われる)それは私自身の不注意や健康への無関心か
ら起きたものではなく、間違いなく遺伝したものだとします。すると一人の友人が思いがけなく
やって来て言います。「ムーディー、君は結核だね」と。
 「よくわかってるよ。人からはそれを言われたくなかったんだがね」と私は答えます。 「でも特
効薬はあるよ」と彼は言います。「信じられないね。私はアメリカやヨーロッパの一流の医者達
に診てもらったんだ。彼らは望みは無いと言った」
  「でもムーディー。君は僕を何年も前からよく知っているよね」
  「それはそうさ」
  「それじゃあ、僕が君に嘘を言うと思うかい」  「いいや」
  「10年前僕は重病の中にいた。医者達も僕を見捨てたんだ。でもこの薬を飲んで助かった。
今は何ともない。僕を見たまえ」
  私は彼のは非常に稀なケースだと言います。
  「そうかもしれない。しかし事実は事実だ。この薬で僕は治った。君も飲んでくれないか。きっ
と治るから。どうかお願いだ、これはとても大事なことなんだ」
  私は言います。「信じたいとは思うよ。でもこれは僕の理性に反するな」
  これを聞くと、その友人は出て行って別の友達を連れて戻って来ます。そしてその人は同じ事
を証言するのです。しかしそれでもまだ私は信じません。それで彼は行ってまた別の友達を連
れて来ます。さらに次々と別の友達を連れて来、彼らは皆同じ事を証言するのです。彼らは
皆、かつて私と同じ位悪い状態にあり、私に薦められているのと同じ薬を飲んで癒されたと言う
のです。そこで私の友人は私にその薬を手渡しますが、私はそれを地面に投げ捨てます。私
はその救いの力を信じないのです。私は死んでしまいますが、それは私がその特効薬をはね
つけたからにほかなりません。ですからもしあなたが滅ぶとしたらそれはアダムの罪のせいで
はなく、あなたを救うために差し出されている「特効薬」をはねつけたからからなのです。あなた
は光よりもむしろ闇を選ぶのです。「 私たちがこんなにすばらしい救いをないがしろにしたばあ
い、どうしてのがれることができましょう」もし救いの「特効薬」をないがしろにするなら、あなた
には希望はありません。
  傷をただながめていても癒しにはつながりません。もし私達がイスラエルの宿営にいてあの
燃える蛇に噛まれたとしたら、傷口を眺めていても何の役にも立ちません。誰一人傷口を見つ
めることで救われることは出来ません。しなければならないことは救いの「特効薬」を見つめる
こと、あなたを罪から救う力を持つお方を見上げることです。
  イスラエルの宿営を見なさい。あなたの目に映る光景を御覧なさい。多くの人々が与えられた
救いの「特効薬」をないがしろにしたために死んで行きます。乾いた砂漠の中にたくさんの小さ
な墓があります。多くの子供達が燃える蛇に噛まれたのです。親達は子供達の遺体を運び去
っています。向こうではちょうど一人の母親が埋められているところです。愛された母親が地中
に横たえられているところでした。家族全員が泣きながら愛する者のまわりに集まっています。
死を悼む泣き声が聞こえ、苦々しい涙が見えます。宿営のいたるところで泣き叫ぶ声が聞こえ
ます。幾千もの死んだ人々のために涙が流されています。さらに幾千もの人々が死んで行きま
す。災いは宿営の端から端へと猛威をふるっています。(つづく)


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