「同労者」第34号(2002年7月)                        目次に戻る

聖書の植物

− いばらとあざみ(2) −

 写真と斜体の解説文は、廣部千恵子氏のホームページ「聖書の植物」から同氏の許可によ
り掲載。詳細はホームページ、 http://www2.seisen-u.ac.jp/~hirobe/biblicalplants.html  
または、「新聖書植物図鑑」(廣部千恵子著、横山匡写真、教文館発行)をご覧下さい。 


「また、(神は)アダムに仰せられた。『あなたが、妻の声に聞き従い、食べてはならないとわた
しが命じておいた木から食べたので、土地は、あなたのゆえにのろわれてしまった。あなたは、
一生、苦しんで食を得なければならない。土地は、あなたのために、いばらとあざみを生えさ
せ、あなたは、野の草を食べなければならない。あなたは、顔に汗を流して糧を得、ついに、あ
なたは土に帰る。あなたはそこから取られたのだから。あなたはちりだから、ちりに帰らなけれ
ばならない。」(創世記3:17〜19)




キリストイバラ  Ziziphus spina-christi
     クロウメモドキ科ナツメ属



ヘブライ語でアタドゥと書かれているところについて、このキリストイバラであろうとする人がい
る。
キリストイバラはアフリカから来た熱帯の木で、葉は楕円形で歯状葉、長さ3〜5cm、幅2cm
位である。夏に緑黄色の匂いの強い小さな花をつけ、やがて小さな実がなる。果実は初めは
青くて酸っぱいが、やがてオレンジから赤色になり甘くなるが水分が無くなってくる。キリストイ
バラは大きな木で、枝が垂れ下がりよい木陰をつくる。羊飼いたちの格好な休息の場所になる
し、若芽は羊や家畜の飼料になる。ハンモックを吊るしたり、何かをかけるのにも役立つ。キリ
ストイバラは、キリストが受難の時にかぶった茨の冠の材料となったとする説により、このラテ
ン名がつけられている。確かにキリストイバラは冠をつくるのには枝が長いのでつくりやすい。
しかし、現在のエルサレムには見かけない。キリストの受難の当時エルサレムに沢山のキリス
トイバラが自生していて、兵士たちが容易に冠をつくることが出来たという証拠はどこにもな
い。しかし、冠の一つの候補であることには間違いないであろう。
トゲワレモコー(シラー)は、エルサレムでも何処にでも生えている。キリストのイバラの冠をつく
るのには手近な材料である。刺も非常に痛い。ただ、キリストイバラと違ってシラーは短く枝分
かれしているので冠にするのは大変である。いずれにしろ、キリストイバラかシラーでキリスト
の茨の冠がつくられたことは間違いないであろう。
このキリストイバラはとげが非常に痛いので、聖書の時代には羊などの囲いになっていた。い
までもアラブ人たちは自然にできた洞窟の入り口にこのような石とシラーでつくった囲いをして
羊ややぎを飼っている。





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