「同労者」第40号(2003年1月)              目次に戻る      表紙に戻る

ショートコラム ねだ

 − アナウンサーは辛(つら)いよ  −

 もう足かけ3年前のこととなってしまったが、面白いと思ってメモしておいたものが出てきた。
2000年4月24日夕方、NHK福島放送局の女子アナ氏が、ニュースを読み上げていた。そ
の中にこんなくだりがあった。
・・○○学校では、孵化した稚魚、×万×千お△△川に放流しました。・・
"お"が問題なのである。漢字で書けばすぐ分かる。「尾」である。これは「び」と読む。こうして新
米アナウンサー氏のポカミスは"尾"ひれをつけて語られる。彼女はきっとアトで叱られたに違
いない。
 またこんなこともあった。
2002年7月3日朝7時からのNHKニュースで、ドイツ南部で起きた二機の飛行機が空中衝
突して墜落した事故を報じていた。
・・両機は高度12000キロメートルで飛行していたが、・・
おい、おい。人工衛星じゃありませんぞ。そりゃ、1000倍違ってますよ。
だいたいアナウンサーの仕事は秒刻みにできていて、練習なんぞやってるひまはない。読んで
いる原稿の後のほうはまだできていないことが当然のようだ。だからときどき間違いが起きる。
しかし、聞き手は耳をそばだてて待っている。何か変なことを言わないかと。世の中"揚げ足取
り"で一杯ですからね。
 ついでにもうひとつ。これは私が子供の頃父親から聞いた話である。当時はもちろんテレビ
はなかった。
――料理の番組がラジオ放送であった。担当の料理の先生が放送直前になって、病気か何
かで都合が悪くなり、出演できなくなった。やむをえず男のアナウンサーが原稿を読み上げる
ことになったがその中に、
・・大根を千六本に切り、半分を酢の物に、半分を味噌汁に・・
とあった。だがこのアナウンサーは読み進んでいくうちに勢いづいて、こう言ってしまった。
・・大根を千六本に切り、半分の五百三本を酢の物に、残りの五百三本を味噌汁に・・――
「五百三本はアナウンサーの言い伝えになった。」これは「サウルもまた、預言者のひとりなの
か。」みたいなものか。

当コラムが悪い手本を示しているか・・と危惧しつつも・・本当は間違いなんてあったって大した
ことないのさ。
諸君、五百三本はさておき、語るものは辛いのである。説教に先生が何回「エー」というかなん
て数えていたり、「あ、あそこを間違った、ここを間違った・・」なーんて考えていると、肝心の内
容を聞き漏らしますぞ。





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