「同労者」第51号(2004年1月)              目次に戻る      表紙に戻る

ショートコラム ねだ

 − ナノ  −


 2004年を迎えた。1999年か2000年にご再臨があるのではないかと期待した人々もいた
ようであるが、・・時は変わりなく流れてゆく・・といった感じである。
 しかし、私たちの周囲の様相は、どんどん変わる。
最近「ナノ」ということばを、一般の場でも聞くようになった。かつては「ミクロ」ということばがそ
の最先端であった。ミクロとはマイクロメータ(ミクロン)つまり1ミリの1000分の1のイメージな
のである。普通使っている紙の厚さや、髪の毛の太さが数十ミクロンであるから見当がつく。
 ミクロの世界の代表は細菌である。うろ覚えの話であるが、細菌学の草分け的存在であっ
た、パスツールという人物は、ありとあらゆるものに細菌がうようよいることに気づいた。自分
の食べているものにも細菌がうようよいる。それで一時は食物を食べることにさえも抵抗を感じ
てしまったそうだ。人物名が違っていたらお赦しあれ。今は人間は100兆個もの細菌に取り巻
かれて生活していることが分かっている。腸の中だけでもそれくらいいるのである。対する人間
の側にもミクロの世界がある。たとえば血液を濾過して老廃物をすててくれる腎臓のその濾過
を行う器官はネフロンというが、ネフロンは片方の腎臓だけでも100万個もあるのだそうだ。
 さて「ナノ」であるが、これは1ミクロンの1000分の1を指すのである。
 1ナノメータなどという小さい単位でいったい何を測るのか。有名な電子顕微鏡でもそんな領
域は見えない。だが世の中、科学技術的には進んできて、もう物質が作られている基本となっ
ている原子の姿さえ、トンネル顕微鏡とか原子間力顕微鏡などと呼ばれる特殊な顕微鏡で画
像にして見られるようになったのである。
見えて測ることができれば、何かに使ってみたくなるのが人間である。皮膚を通り抜けて肌か
ら吸収されて作用する微粒子を含んだ化粧品、細胞膜を通りぬけて作用できる微少な成分か
らなる薬など着々と開発が進められている。自動車メーカは自社の自動車を燃料電池で走ら
そうと躍起であるが、燃料電池の燃料である水素を作ったり貯めたするための鍵となる技術は
ナノ領域の世界にある。開発された結果は、携帯電話やインターネットが世を覆ったように、世
を覆うにいたるであろう。

しかし、人は変わらない。
♪・・人の心の変わるまでは
    地によきことの芽ばえいでじ
    主よ、新たになす霊
    注ぎたまえ
 と叫ばずにはいられないではないか。





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