「同労者」第52号(2004年2月)                  目次に戻る    表紙に戻る

論説
 ― この世のことに正しい知識を持とう ―
− ハンセン病− 


 私たちはこの世で生きているのですから、この世のことに関わらないわけにはいきません。
私たちが関わる様々のことに正しい知識を持っていないならば、誤った行動をするかもしれま
せん。私たちは神を愛し隣人を愛して生きることを掲げています。動機は愛であっても、誤った
行動をするならばその愛を損ねるものです。ですから行動を誤らないように正しい知識を身に
つける努力が必要です。
 昨年末あるホテルが、ハンセン病の患者の団体客の宿泊を断ったということがマスコミに取
り上げられ問題となりました。ハンセン病はもとは癩(らい)病と呼ばれおり、私たちが現在使
用している新改訳聖書もらい病としています。この聖書は用語の変更がなされるそうですが。
 ハンセン病の治療や伝染などに関する現在の状況を先に述べます。 第二次世界大戦の直
後から、病原微生物を殺したり無害化したり増殖を阻止する抗生物質というものが多数発見さ
れました。最初に登場したのがペニシリンで皆さんもきっとその名を聞いたことがあるでしょう。
抗生物質というのは、ある種の菌類(黴、かび)が産生する物質です。その中のサルファ剤とい
う種類がハンセン病に有効であることが分かりました。このサルファ剤を使用することによっ
て、崩れた皮膚の痕跡は残りますが、病気は治癒し他の人に伝染することがなくなりました。
それまで、ハンセン病に罹った人は法律で隔離されていました。治癒できると分かった後も、
日本の旧厚生省は隔離政策を続けました。それが50年も放置したと非難される所以(ゆえ
ん)です。またハンセン病患者はらい病と呼ばれたそのイメージが深く社会に浸透していて、そ
のために差別を受けてきたという現実があります。
 ハンセン病はらい菌という病原体によるものですが、その菌は1879年ノルウェーの医学者
ハンセンによって発見されました。もともと大変弱い菌で、体質的にその菌に弱い人が、家族
間での接触のように長い期間その菌に接触した場合のみ発病するものだそうです。ハンセン
病に長く取り組んだ高橋という医者がおりますが、彼は自分の体にらい菌を注射してみたが、
発病しなかったそうです。賀川豊彦という人はハンセン病患者の入った後の風呂に自分も入
り、働き人たちにも入らせたというエピソードが残っています。
人間の体には、病原体その他の異物が侵入してくるとそれを排除する作用があります。ことに
血液の中の白血球・・白血球というのは他種類存在しますが、特にマクロファージと呼ばれて
いるものが・・侵入してくる病原体を取り込んで消滅させます。これを食菌作用といいます。ひと
たびハンセン病が発病すると、らい菌はこの白血球に勝ってしまうのです。ですからハンセン
病は血液の病気であるといっても過言ではありません。白血球が負けると、病気は癒えること
なく限りなく続きます。そして膿(うみ)が出続け、病巣部分の皮膚は崩れてしまいます。ハンセ
ン病のもう一つの特徴は知覚が麻痺することだそうです。ですから、「ぶちぬき」とかいって、膿
(う)んだ部分に自分で穴を開けて膿を絞り出すとかといったことをしてもたいして痛くないのだ
そうです。隔離施設に長く入所していた患者の視点に立って書かれた「いのちの初夜」という本
があります。文庫本で安価ですから、かつてハンセン病がどのようなものであったか知りたい
方に一読をおすすめします。中には患者同士が隔離施設内で結婚し赤ちゃんが生まれ、その
赤ちゃんは健常人であったというようなエピソードも記されています。少し脱線かも知れません
が、同じ血液の病気であるエイズでも、母親がエイズでも出産のとき赤ちゃんに傷をつけない
ように帝王切開で生むと母子感染が起きないとのことです。胎盤を通して栄養分と酸素などの
必要なものが交換されるのみで、母親の血液と胎児の血液は遮断されているためです。ただ
し、梅毒ではほとんどそれは望めないそうですが。
 聖書はこれを「罪の性質の型」として位置づけています。その取り扱いについても私たちは正
しい知識をもっていなければなりません。それは治療法のなかったときのこの病気の姿の上に
立っています。アラムの将軍ナアマンがらい病を癒やされるようにとのイスラエルの王宛の手
紙をもっていったとき、イスラエルの王は「わたしは生かしたり殺したりできる神であろうか。」と
いって怒ったと記されているとおり、神以外にこれを癒やすことのできるものはないと思われて
いました。それは罪の性質はどのようなものか教えるためであって、病人をどうするといったも
のではありません。罪の性質の型というのは、ハンセン病だけでなく、死体や排泄物、動物や
住居、衣類、また生理的な体からの漏出物にまで及びます。それらの中でハンセン病が伝染
力があること、その人間の姿に及ぼす影響の故に、ことに恐れられたことは言うまでもありま
せん。イエスは食物について、外から人に入って人を汚すものはなく、ひとの内からでるものが
人を汚すのだと言われて、食物の汚れに関する律法の規定を、霊的なものと置き換えるべき
ことを述べておられます。同様にハンセン病も人の心を汚すものではありません。真に恐れな
ければならないのは型に示される罪の方であって、この病気がいのちの本源ともいうべき血液
の、病気(死)を排除する作用を失わせやがて体全体を死に至らせるように、罪の性質は永遠
のいのちを蝕み、やがて最後の審判における滅びへと至らせます。この病気が知覚を麻痺さ
せるように、罪の性質は良心を麻痺させ、自分のいのちが罪に蝕まれていることを、苦痛に感
じさせない作用をします。
 これらのことを考慮に入れ、正しい学びをして、伝えられてくる報道などに、対処を誤らないよ
うにしましょう。
 


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