「同労者」第53号(2004年3月)              目次に戻る      表紙に戻る

ショートコラム ねだ

 − ダイエット  −


 さてここに語るダイエット論、ルーツをたどれば、学校の授業あり、書物、新聞、テレビ、ラジ
オ、広告、人から聞いた話あり、まこと様々ではあるが、寄せ集めてみればなにがしかの役に
立つであろうと思われる。
 さて、ひとたび体についたものを減らす作業はまことに困難である。"テロリスト諸君よ。アメリ
カを滅ぼすにはテロよりも、おいしくて栄養価の高い食べ物をどしどし送り込む方がよい。"な
ーんて言える海の彼方の現状らしい。だがしかし、対岸の火事どころではなく、日本にも、然
り、自分にも同じ危険がせまっているではないか。
子供の頃から、そしてまあ若い頃は、食べたいだけ食べても太るなんてことはなかった。その
原因は、新陳代謝なのである。新陳代謝とは、体を作っている細胞を作り替えることであると
いっても過言ではない。人間の体を構成している細胞のうち、皮膚と肝臓は、怪我や生体肝移
植に提供したとかで、その一部がなくなっても再生されるのであるが、他の部分は、ひとたび失
われると再生されない。しかし、その中身は一定期間経過すると全部新しいものに取り替えら
れるのである。であるから、成長と同様に多大のエネルギーを必要とする。心臓、肺、消化器
官その他最小限の器官以外は動いていない、全く安静にしている状態で1日に必要とするエネ
ルギー量を基礎代謝というのであるが、普通の成人で1500kcal程度である。運動と比較して
みると、性別年齢体重によって異なるが、男、40歳、体重70kgの人で代表させると、1時間
歩いて消費するエネルギーは200kcal位である。新陳代謝がもし20%ダウンすると300kca
lも余ってくるのであるから、従来通りの食事量で、従来よりも1時間半よけいに歩いてちょうど
バランスすることになる。そのような生活はまずできないから、新陳代謝の減少は重要な問題
である。若いときにはこの細胞の取り替えが活発であるので、食べた食物のエネルギーがどん
どん消費され、体にたまることがないのである。この新陳代謝は一生涯なくなりはしない。しか
し、年と共にその早さが衰えてくるのである。普通の人は40歳過ぎた頃からその影響が顕著
になり始める。そのため若いときほど食物の量を必要としなくなり、若いときと同じだけ食べれ
ば余った部分が体にたまるのである。
新陳代謝に大きく係わっているのが、成長ホルモンである。新陳代謝が減ってくるのは成長ホ
ルモンが減ってくるのが一因である。成長ホルモンもまた生涯分泌され続けるのではあるが、
年と共に分泌が減るのである。分泌する器官は脳下垂体である。成長ホルモンの分泌を阻害
する一要因に、睡眠があるのだそうだ。同じように眠っているように見えても、よい眠りと悪い
眠りがある。いびきをかくことが悪い眠りの代表である。睡眠中、いびきをかいていると成長ホ
ルモンの分泌が阻害されるそうである。
 かくいう筆者は睡眠中無呼吸症と診断された。睡眠中無呼吸症はいびきをかいて眠る、悪い
眠りの典型である。太ると喉の周辺にも脂肪がついて気道が狭くなり、睡眠中無呼吸症になり
やすい。睡眠中無呼吸症は成長ホルモンの分泌を阻害し、成長ホルモンの不足が新陳代謝
を減らし、いっそう太らせる。かくして悪循環が始まるのである。礼拝に座ったとたんに眠くなる
と感じる諸兄姉は、自分が睡眠中無呼吸症でないか疑って、いちど専門医をお訪ねあれ。
 もちろん成長ホルモンに係わるのは睡眠だけではない。また妊娠した女性が太る例で明らか
なように、他のホルモンも影響を与えることは言うまでもない。
 新陳代謝をよくする手段に運動がある。今はやりのエアロビック・・有酸素運動よりも、アネロ
ビック・・無酸素運動の方が新陳代謝を向上させるそうだ。後で取り上げるが、運動はエアロビ
ックとアネロビックの組み合わせが必要である。
 甘いものを食べると太ると思っている人がいるかも知れないがそれは間違いである。砂糖1
00gとでんぷん100gのエネルギー量は同じである。要するに総量がオーバーすれば、砂糖で
もでんぷんでも同じだけ太るのである。砂糖はしょ糖というものであるがそれは果糖とぶどう糖
がひとつずつついた2糖類である。でんぷんはしょ糖とそっくり似た分子形状をしていて、水酸
基(OH)と水素分子(H)の位置が一つ入れ替わっているだけである。両方とも、食べて消化さ
れるときは胃と腸の中で、消化酵素の働きでぶどう糖に変化させられて吸収されるのである。
乳糖その他、他の糖類も同様にぶどう糖に変換される。しょ糖ははじめからぶどう糖が1個つ
いているため分解速度が速く、吸収される速度はでんぷんより速い。吸収されたぶどう糖は血
液に混ざって体中を駆けめぐるのである。これが血糖であって、砂糖を食べれば一時的に血
液中のぶどう糖の濃度つまり血糖値が上昇する。すると膵臓にあるランゲルハンス島という器
官からインスリンが分泌され、インスリンの働きでぶどう糖は中性脂肪、あるいはグリコーゲン
というものに変えられる。そしてその中性脂肪やグリコーゲンはまず肝臓にたまるのである。肝
臓にためる分が余ってくると皮下脂肪として蓄え、さらに全身の組織にくまなく脂肪がたまってく
るのである。困ったことにひとたび中性脂肪に変えられたらぶどう糖には戻らないのである。
 血糖値があがると満腹感、血糖値が下がると空腹感を感じるのであって、胃の中の食物の
量が満腹感を決めているのではない。これが食べ過ぎをコントロールできるか否かをにぎる大
切な鍵である。もう一つ、体内で脂肪がエネルギーとして使われると脂肪酸というものが出来
る。この脂肪酸も空腹感をもたらす。体脂肪を減らすには空腹感が避けられないのである。
長くなるので以下は次回にしよう。





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