「同労者」第54号(2004年4月)             目次に戻る     表紙に戻る

聖書の植物

− 樹 木 (15) −

 写真と斜体の解説文は、廣部千恵子氏のホームページ「聖書の植物」から同氏の許可によ
り掲載。詳細はホームページ、 http://www2.seisen-u.ac.jp/~hirobe/2002tree10.htm  
または、「新聖書植物図鑑」(廣部千恵子著、横山匡写真、教文館発行)をご覧下さい。 



樫Quercus ithaburensis
ブナ科コナラ属


アブラムはその地を通り、シケムの聖所、モレの樫の木まで来た。当時、その地方にはカナン
人が住んでいた。(創世記12:6)

  
Q. calliprinos

但し、創世記35:4の記載「人々は、持っていた外国のすべての神々と、着けていた耳飾りを
ヤコブに渡したので、ヤコブはそれらをシケムの近くにある樫の木の下に埋めた。」の樫はヘ
ブライ語がエラーとなっているのでテレビンの木である。


左から聖地ガシ、ボアッシーリガシ、タルボガシ


さて、聖地には樫の木が3種類ある。他の希少種についてはここで触れない。樫と聖書には書
いてあるが実際は分類的にはナラである。そのことを述べた上で、樫としよう。セイチガシ
Quercus calliprinos(イスラエルではこのように言われているが、HepperはQ.cocciferaとしてい
る)はごく普通の常緑の低木で、冬から早春にかけてはこの樫だけが葉がある。葉は卵形から
長楕円形で比較的小さく、皮のような光沢がある。葉の大きさは他の2種よりも小さく、2〜4x
1〜1.5cm位である。葉の縁は歯状で少し切れ込みが深く、葉の先はとげのように尖ってい
る。通常は根元から枝分かれしている低木であるが、時には幹も太くなり、丈も高くなる。常緑
であるが、春先に新しい葉が出てくると落葉する。花は3〜4月に開花し、果実は12月頃に熟
す。沢山の雄花を尾状花序につけ、まばらに上に穂状花序についている雌花の下に垂れ下が
っている。両花とも目立たないが、風で受粉する。堅果は他の2種よりも小さく、総苞は図のよ
うになっている。聖書に出てくる樫は力,長命、誇り、堂々たる様子のシンボルのように述べら
れているところではタボルガシQercus ithaburensis(Q.macrolepisまたはQ.aegilops)のように考
えられる。しかしセイチガシも所によってはかなり大きくなり、しかも常緑であるので、墓や礼拝
の対象としても使われる。その良い例がヘブロンにある樫の木である。アブラハムはマムレに
樫を植えた。今でもヘブロンの町はずれのギリシャ正教の教会の庭にセイチガシの大木が保
存されていて、アブラハムの樫の木と呼ばれている。



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