「同労者」第55号(2004年5月)                  目次に戻る    表紙に戻る

論説
 ― BSE(狂牛病) ―

「この世のことに正しい知識を持とう。」の第二弾として、BSE(狂牛病)について考えましょう。
BSEは、日本では2001年にはじまり、今年3月にも発生が認められ、その間現在までに11
頭の牛に発生が確認されています。
 現在、アメリカで狂牛病が発生したため、アメリカからの牛肉輸入がストップしています。吉野
屋はじめ牛肉を使っているファーストフード店が、打撃を被っていることは皆さんもご承知の通
りです。仙台では牛タンが名物として売られていますが、原料の牛肉はアメリカ産であったた
め、みやげ物店や牛タン定食屋などがピンチに陥っているわけです。こちらは、牛丼のかわり
に豚丼というわけにはいかないためです。そのため早く輸入を再開してくれと農林水産省に働
きかけています。輸入が再開されない理由は、日米の検査態勢の差にあります。日本では、
日本で狂牛病が発生した際、食用に使われる牛全部を検査して、狂牛病ではないと判定され
たもののみ、流通を認めることにしました。またその解体にあたって、脳と脊髄を傷つけずに
除去する方法をとることを義務づけました。同じ検査をアメリカに対して求めていますが、アメリ
カでは年間3500万頭もの牛が食用とされているため、全頭検査は費用の点からやりたくない
というのが本音でしょう。アメリカ政府は、輸出したいために業者が自主検査するといっている
ことさえ認めようとしません。大切なことは、アメリカ政府の言うように、全体との比率からは、
食用に供される牛のほんの少数を抜き取り検査しただけで本当に安全か?という点にありま
す。実際は、検査そのものよりも、生産と流通に関わっている人々が狂牛病を恐れているかど
うかが最も大切です。何でもないと考えている人々は、真剣に取り組むはずがありませんか
ら。
 さてBSEはどんな病気かというと、伝達性海綿状脳症というまだ十分に解明されていない病
気の一種で、牛の脳にスポンジ状の変化を起こし、脳の機能が損なわれてやがて死に至ると
いうものです。病原体は、微生物ではなく、プリオンというタンパク質の一種であると考えられて
います。類似の人間の病気にクロイツフェルト・ヤコブ病という病気があり、人間にはその新種
であると考えられています。従来のクロイツフェルト・ヤコブ病と比較すると、BSE関連の脳症
は、
・若年層で発生すること、
・発症して死亡するまでの平均期間が
6ヶ月から13ヶ月に延長していること、
・脳波が異なること、 
・脳の病変部に広範にプリオンのかたまりが認められること
などの特徴があるというイギリスの調査結果が厚生労働省のホームページに掲載されていま
す。
潜伏期間は数ヶ月から数年間である、進行性で致死性の神経疾患で、かかった牛や人の脳
に異常タンパクが必ず認められ、上述のように脳に空胞ができ、また免疫は認められないそう
です。
イギリスでBSEにかかった牛が多数発生し、類似の病気が人間にも多数発生したことから、そ
の原因を追跡したところ、牛の肉骨粉をえさに使用していることに強く関係していることが判明
し、また人間がその牛を食べると発症することが判明しました。こうして、感染経路が特定され
ました。
 病原体が微生物ではなくタンパク質であるということは、大変やっかいなことであって、これま
で微生物に対してとってきた、もっとも一般的な対処法である薬剤による消毒や加熱処理が役
に立ちません。また単なる毒物とは違って、動物の体内でこのプリオンが増殖するため、動物
を食べ、あるいはまたその肉骨粉を飼料として動物を飼うという食物連鎖を断ち切らないとど
んどん増えていってしまうことになります。
 動物を原料とする医薬品がたくさんありますが、このBSE問題をきっかけに、イギリスなど特
定の国の牛を医薬品、医療用具、化粧品の原料に使用することは禁止されています。
 食用にしないことにした牛の脳や脊髄を処分するのに、従来のように肉骨粉として家畜のえ
さにできないため大変困っています。そこいらに放置すると、肉ですから腐敗、分解して土に帰
りそこからまた小動物を介して食物連鎖が始まるため、簡単には捨てられません。プリオンを
確実に分解できる温度は850℃で、わざわざ使わない肉骨粉をつくり焼却処分をしています。
セメント工場などで燃料にしてもらっていますが、それも限られていて、何十万トンという膨大な
肉骨粉が野積みになっています。
 私たちがこのような問題に対処するのに、いたずらに過敏になる必要はありません。しかし、
「蛇をもつかみ、たとい毒を飲んでも決して害を受けず、・・」(マルコ16:18)と言い切ってはいけな
いでしょう。私たちは、病気にもかかれば、事故にも遭います。ですから、このような問題は科
学技術的に正しいといえる対処をとることが最善です。そのような観点からいくつかの点を心
にとめて置くことが必要です。BSEは人間を廃人にし、死に至らせる恐ろしい病気であること、
BSEにかかった牛の特定部分を食べるとそれにかかる可能性があること、それを煮ても焼い
ても対策にならないこと、などが基本的知識です。
 アメリカからの輸入問題に加え、現在危険部位として、異常プリオンが見つかった小腸が指
定されていますが、腸全体を指定に入れるか否かで議論されています。私たちは、全般によい
検査体制のある状態で食物が供給されている環境にあり、小売りされている食物を気にせず
に買って食べています。ですから関係する人々が判断を誤ると、水俣病のような公害が発生し
ます。私たちと子供たちの神から預けられている大切な体が健康に保たれるよう、関係する担
当官が誤らないよう願うものです。
 


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