「同労者」第95号(2007年9月)                          目次に戻る

聖書の植物

− 畑の植物から

 写真と斜体の解説文は、廣部千恵子氏のホームページ「聖書の植物」から同氏の許可によ
り掲載。
詳細は同氏のホームページ
         http://www2.seisen-u.ac.jp/~hirobe/2005feild2.htm#f1
 又は「新聖書植物図鑑」(廣部千恵子著、横山匡写真、教文館発行)をご覧下さい。




小麦Triticum duram
イネ科コムギ属



はっきり言っておく。一粒の麦は、地に落ちて死ななければ、一粒のままである。だが、死ね
ば、多くの実を結ぶ。(ヨハネ12:24)

また別の人には、『あなたは、いくら借りがあるのか』と言った。『小麦百コロス』と言うと、管理
人は言った。『これがあなたの証文だ。八十コロスと書き直しなさい。』主人は、この不正な管
理人の抜け目のないやり方をほめた。この世の子らは、自分の仲間に対して、光の子らよりも
賢くふるまっている。(ルカ16:7〜8)

あなたの神、主はあなたを良い土地に導き入れようとしておられる。それは、平野にも山にも
川が流れ、泉が湧き、地下水が溢れる土地、小麦、大麦、ぶどう、いちじく、ざくろが実る土
地、オリーブの木と蜜のある土地である。
(申命記8:7〜8)

小麦の記載は聖書の中に多い。聖書時代からこの地の主要産物であった。しかし降雨量が少
なかったり、全く雨の降らない時には大飢饉となった。ヨセフの時もその例である。現在小麦の
種類はかなりあるが、Zoharyによるとイスラエルには二粒系小麦の2種の小麦が栽培されて
いる。1つがマカロニ小麦(Triticum duram)で、ピタなどのパンをつくる粉として、グルテンに富
み、よい粉を生ずる。他の1つがエンマ小麦(T.dicoccum)で、これはやや劣る。中空の茎の
先に3〜6個の花が穂状についた小穂からなる穂がつく。花のうち2〜3個が穀粒となる、種子
が1つで、小さな胚と大部分を占める胚乳からなり、その70%は澱粉、10%が蛋白質であ
る。外層はふすまとなり、家畜や家禽の養分に富む餌となる。この小麦の先祖はイスラエル、
ヨルダン、シリア、レバノン、南東トルコ、北イラク、西イラクの地帯に分布し、T. dicoccoides(T.
turgidum spp, dicoccoides )と呼ばれる。この野生種は実が脆くて取れやすく、野生の繁殖に適
しているが、栽培種は次第に実が取れにくく、丸みを帯び大きくなっている。
現在我々がパンを作るために栽培するのはパンコムギT. aestivum(六倍種)で、この方が現
在のようにふっくらとしたパンを焼くのには適している。マカロニ小麦はグルテンに富み、マカロ
ニなどを作のには適しているが、ふっくらとしたパン製造にはあまり適さない。中東で食べられ
ているピタを焼くのには適するであろう。小麦の薬用についてDukeは種々の効果をあげてい
る。しかし小麦は薬というよりも滋養を与えるものと考えた方がよい。イエスが誰にでも手に入
る小麦からつくられたパンを、自分の体として最後の晩餐の時にこの世に残されたことに深い
意味を感じる。





トップへ
トップへ
戻る
戻る