「同労者」第97号(2007年11月)
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写真と斜体の解説文は、廣部千恵子氏のホームページ「聖書の植物」から同氏の許可によ
り掲載。
詳細は同氏のホームページ
又は「新聖書植物図鑑」(廣部千恵子著、横山匡写真、教文館発行)をご覧下さい。
よく使われる鍵と並べて大きさの分かる写真が載せられています。) い種を畑に蒔いた。人々が眠っている間に、敵が来て、麦の中に毒麦を蒔いて行った。芽が 出て、実ってみると、毒麦も現れた。僕たちが主人のところに来て言った。『だんなさま、畑には 良い種をお蒔きになったではありませんか。どこから毒麦が入っていったのでしょう』。主人 は、『敵の仕業だ』と言った。そこで、僕たちが、「では、行って抜き集めておきましょうか。』とい うと、主人は言った。『いや、毒麦を集める時、麦まで一緒に抜くかもしれない。刈り入れまで、 両方とも育つままにしておきなさい。刈り入れの時、「まず毒麦を集め、焼くために束にし、麦 の方は集めて倉に入れなさい」と、刈り取るものに言いつけよう』」。(マタイ13:24〜30) 畑の産物ではないが、小麦畑に生えてみるものとしてコムギの後に挿入した。本来ならば毒草 のところで取り扱われるものであろう。 聖書で「毒麦」はマタイ13:25〜40に9回出てくる。ドクムギは4000年前のエジプトの墓から 発見されているが、旧約聖書には述べられていない。 草丈70cmくらいの植物で、線形の葉は10〜30cmである。5月頃15〜25cmくらいの穂を 生じ、小穂は15〜18mmで、花穂の軸の左右に互生する。雄しべは3本で、花柱は短く、実 にテムレンtemulenという有毒アルカロイドを含む。 これを食すると、頭痛、めまい、悪心、嘔吐などを起こして死亡することもある。また牧草また 牧草に混入すると家畜が中毒する。一説によると、この毒は、ドクムギ自体ではなく、 Emdoconidium temulentumという菌がドクムギについて毒化するといわれている。種子が発芽 する時期も、実がつくときもコムギと同じなので、コムギと一緒に刈り取られ、小麦の品質を低 下させることがある。イエスがガリラヤの麦畑を通られた時に、このドクムギもコムギと同じよう に育つが、実るとコムギと全く異なる。収穫の時にドクムギを先に集めてしまえば、よい麦を損 なうこともない。 パレスチナの農夫は雨の多い時にはコムギがドクムギに変わると信じていたようである。ドク ムギの発芽能力は数年間保たれるようである。そこで、ドクムギの種が地に落ちても雨の少な い年にまとめて発芽する。このように考えると雨の多い年にドクムギが多いことも納得できる。
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