「同労者」第64号(2005年2月)
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三浦綾子氏に影響を与えた人物としては、自伝「道ありき」に登場する前川正氏と三浦光世
氏がその代表として挙げられますが、その他の人物として筆頭に挙げなければならないのは、 今日取り上げた「愛の鬼才」の主人公西村久蔵氏だと言えるでしょう。「道ありき」を読めば、西 村氏が三浦綾子氏の受洗にあたってどれ程大きな影響を与えたかがわかりますが、この「愛 の鬼才」を読む時、この偉大なる西村久蔵氏がどのようにしてこれ程の聖徒となり得たかを知 ることができます。
西村氏にまず影響を与えたのは、そのすばらしい両親でした。西村氏が中学4年で落第した
時、父親はこのように語り、彼を力強く励ましたのです。「なあに、人間、ちゃんと生きて行け ば、失敗もいつか勲章になる。人様の前で、おれは中学の時落第をしたことがあると、言える 人間になってみろ。ああ、あの人でも落第をしたことがあるのかと、どれだけの人間が勇気づ けられるか、わかりゃあしねえ。お父さんはな、失敗は人間になくちゃあならねえものかもしれ ねえと、思っている。一度も失恋もしたこともなければ、金のやり繰りに苦労したこともない人間 なんてえのは、どんなものかねえ。人の涙も、悲しみも、思いやることができねえんじゃねえか」
そして第二に影響を与えたのは、彼の牧師であった高倉徳太郎牧師でした。高倉牧師は「福
音的キリスト教」という名著を残した牧師ですが、それ以上にこの西村久蔵氏を初め多くの偉 大な聖徒達を育てた牧師として名を残しました。ちょうど西村氏がある家庭集会に訪れた時、 悪天候もあり、普段10人程集まっていたのが3人だけであったにもかかわらず、高倉牧師は 熱くキリストの十字架についてメッセージをしたのでした。そのメッセージに捕らえられた西村 氏は、召される前にこう語っていたそうです。「もうぼくにはただ一つのことしかない。キリストの 十字架だけだよ。」
その他様々な出来事や人々の影響を受けながら、西村氏は「愛の鬼才」と名付けられる程
のクリスチャンに成長して行きます。この書ではいくつかのエピソードが記されていますが、そ れらは皆読者を大きな感動で満たさずにはおけないものばかりです。
この西村氏は、神様の不思議な導きで、召される1年程前に三浦綾子氏と出会うことになり
ます。そして、初対面の彼女に対して「今日から私を親戚だと思って、何でもわがままを言って ください」と言われ、その召される時まで精一杯の愛をもって三浦綾子氏に仕えられたのです。
西村氏がよく語っていたという次の言葉は、西村氏自身をよく表現しています。「クリスチャン
という者はね、ストーブのような存在でなければならないよ。ストーブは暖かくて、みんな傍に寄 って来たくなるでしょう」 ![]() |