「同労者」第66号(2005年4月)              JSF&OBの部屋に進む 目次に戻る
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三浦綾子を読む
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− 愛すること信ずること −
東京ミレニアム・チャーチ 牧師  長谷川 与志充
 
 今回は三浦綾子氏の「氷点」「ひつじが丘」に次ぐ3番目の作品であり、最初のエッセイでもあ
る「愛すること信ずること」をご紹介したいと思います。この本は単行本の後講談社新書で出さ
れていたのですが、最近同じく講談社から文庫化され、より多くの方々に読まれるようになりま
した。
 この文庫本の帯には「結婚するあなたへ」とあり、結婚についての学びには最高の教科書と
言えます。理想の夫婦像をその生き方を通して私達に示して下さった三浦夫妻の「すばらしい
結婚生活の秘訣」がこの書には余す所なく書き記されています。
 その秘訣の中で最も大切なものは、「互いにほめ合う」ということです。三浦夫妻はお互いの
長所を著作や講演を通して幾度となくほめ合っていますが、この書はその先駆けのようなもの
です。ほめ合うことの基調にあるのは、自分は相手に愛される価値のない者であるとの認識で
す。その認識からこんな自分を愛してくれる相手に対する感謝の思いが湧き起こって来るので
す。多くの夫婦関係に問題が起こるのは、自分は当然相手に愛される価値があると思ってお
り、それをしてくれない相手に不平不満と怒りが募って来るからに他なりません。三浦夫妻の
「互いにほめ合う」生き方は、現在の多くの夫婦に重要な指針を与えるものです。
 また、三浦綾子氏は「互いに責め合わない」ことを提案しています。ある章のタイトルで「家庭
は裁判所ではない」とありますが、このタイトルは多くの家庭が抱えている問題を見事に言い表
しています。家庭は相手を断罪する所ではなく、相手を赦し、生かす所であることを三浦綾子
氏ははっきりと教えて下さっているのです。
 これと関連することとして、相手をけなさないことも語られています。「鳴らずのバイオリン」と
いう章がありますが、そこでは何かをできる人が結婚相手にけなされることによって何もできな
くなってしまうことがわかりやすく表現されています。光世さんは綾子さんに「綾子は鳴らないバ
イオリンをも鳴らすほうだよ」と言ってくれたそうですが、私達も是非そのような者にならせてい
ただきたいものです。
 そして、三浦綾子氏は「共通の目的を持つ」ことの重要性も述べています。私自身ある本で
離婚しない夫婦の特徴ということで心に留まったのが、この「共通の目的を持つ」ということでし
た。「性生活のない夫婦の愛情」という章で、三浦綾子氏は3組のすばらしい夫婦を挙げ、性
生活が持てないような状況下でも共通の目的を持ち、愛し合い続けた夫婦がいたことを証しし
ています。「忘れえぬ夜」という章では三浦夫妻がクリスマスの夜トラクト配布をする姿が描か
れていますが、ここに共通の目的を持って生きておられる理想の夫婦像をはっきりと見ること
ができます。
 この書は既婚未婚を問わず必読の書です。

 
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