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台本への書き込み — 踏み出された一歩 —

石井 和幸

「この世と調子を合わせてはいけません。いや、むしろ、神のみこころは何か、すなわち、何が良いことで、神に受け入れられ、完全であるのかをわきまえ知るために、心の一新によって自分を変えなさい。」
(ローマ一への手紙 12:2)

 9月半ばのある日、教会用のカバンを整理していると、エクソダスコンサートの台本(仙台聖泉教会の中学生バンド・9月7日にコンサート)が出てきました。スタッフである斉藤恵一兄の忘れ物でありました。・・・恵一兄のコンサートでの役目は、前説(総合司会)、アンコール前のMCでした。台本は、リーダーの山本 守兄との話し合いをもとに、私が作成したもので、バンドのメンバーとスタッフには、「僕の書いた台本はあくまでたたき台だから、主旨を変えなければ、言葉や表現は追加、変更してもらっていいから」と伝えていました。恵一兄はコンサートにて、絶妙なトークで聴衆をなごませ、同時にエクソダスを引き立てる役目を果たしたのです。
 私はコンサート後、彼に対し「本当にいいアドリブだったよ」と声をかけたのです。・・・けれども、彼のMCはその場のアドリブではなく、事前に綿密に準備されたものだったのです。・・・恵一兄の台本には、私が作成したセリフについて、話す間をとるための句読点が書き込まれていました。そして大切な言葉には波線を引き、余計な語句を削ったり、聴衆に分かりやすいように書き換えをした箇所もありました。そして、集会冒頭の祈り、笑いを誘うネタまで細かに書いたメモを、台本に糊付していたのです。 恵一兄は、コンサート開催に至るまで、ベースのコーチとしてバンドに関わって下さいました。彼の忠実さ、地道な働きかけ、メンバーに対する愛は見事に伝わっていったのです。恵一兄の他にも、コーチとして斉藤 強兄、森田 忍兄が労して下さり、彼らの心意気と働きによって、エクソダスは素晴しい演奏をすることができました。 コンサートのテーマ『新しい地を目指して』は、リーダーである守兄の発案でした。最初は、『新しい地を目指して・・・その一歩』にしようかという話になりましたが、どういう一歩を踏み出すかは、コンサートの中で伝えていくことにしました。コンサート前日まで、上手になった部分と、相変わらず上手くいかない部分をもちながら、練習と準備を重ねてきました。前日にリハーサルと、守兄との最後のMC打ち合わせをしようとしていた時、私は午前中会社にて頭に怪我をしてしまいました。頭部の怪我なので、無理をしてはいけないとの指示。リハーサル指導は牧師先生ご夫妻に委ねることになりました。
 私は電話にて守兄に、「明日はとにかく、エクソダスとあなた自身がこれから歩み出そうとしている『一歩』について、はっきり伝えていこう」と話しました。彼のそばにいる人達がフォローして下さることを計算に入れながら、私はそう話すしかありませんでした。 コンサートの中で守兄は、新しく踏み出す一歩について、神が必ずこれから道を開いてくださる。但し自分達が神に信頼していくならば・・・と告白していました。そして、私が作成した台本についても、メンバーそれぞれがアレンジを加えながら語られました。コーチと一緒に作り上げたギターのリード、ドラムのフィルイン、ベースのリズム、寝る前にもう一度・・・と夜中まで練習したピアノ、そしてほとんど栄姉が自分で考えたキーボードのリード。メンバーはしっかり「その一歩」を踏み出していきました。
 そして、結果として私達夫婦が至らなかった「最後の仕上げ」を牧師先生ご夫妻がアシストして下さる形となりました。私は当日、ミキサー(音響)を担当しました。前日のリハーサルに出られなかったにも関わらず、「エクソダスの演奏を知り尽くしているのは自分」と自負したのです。けれども、実際はまるで初対面のバンドのコンサートを担当するような緊張感の中、堅くなりながらミキサーをいじっていました。後になって、ミキサーはリハーサルに立ち会った牧師先生に任せてもよかったのでは?と示されました。・・・そんな一連の出来事が終わり、私は恵一兄の台本を見つけたのです。「新しい一歩」を踏み出すために、恵一兄を始めとする多くの方がこの働きのために祈り、一生懸命取り組んだことを改めて覚え、自分の取り組み方を振り返りました。
 9月19日、私達の教会を会場に、世の光クリスマス準備祈祷会が行われました。エクソダスは特別讃美として、コンサートで演奏した中から3曲を披露しました。私はスケジュールの都合もあり、ミキサーを担当せずに、聴衆として集会の席に座りました。 いよいよエクソダスが出演、私はメンバーの顔を見ました。(これは硬いなあ・・・こわばっているなぁ・・・)そう思った私は、その場でメンバーに合図を送りました。どんな合図かは秘密です(笑) すると、メンバーに笑顔が戻り、安定した素晴らしい讃美、演奏をしたのです。その時になって、私の本当の役目はこれだったのだと悟りました。
 「新しい地を目指して」その一歩は、これからメンバーがイエス・キリストに出会うためのものであると同時に、私達夫婦にとっても大切な一歩だったのです。6月に婦人伝道師の山本盡子先生が、私の家内にあてたメール「この関わりは、後にそれが、豊かな恵みになると信じて下さい。自分に返ってくるのではありません。祝福は周りにいる愛する者に帰ってきます。 自分の為なら、まあいいかとあきらめます。でも、愛する者の為なら、しがみ付くでしょう」・ ・・ この言葉の意味がようやく身にしみて分かるようになりました。まもなく生まれる子供のために、主に仕える者でありたく願っております。
(仙台聖泉キリスト教会 会員)

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