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キリスト教—信徒の志す—

随想

— 現代日本を象徴するフレスコ画は何か? —

aratakamata-san

鎌田 新



 さて、東京上野ではミケランジェロ展が開かれている。彼のフィレンツェ時代最後の未完彫刻、ダビデ=アポロをはじめ、大きな影響を受けたラオコーン像の複製(これのみ写真撮影可)などを観る事が出来る。
 紀元前後、すなわち主イエスが地上を歩いておられた頃から伝わるグレコローマン美術とミケランジェロをはじめとするルネサンス芸術が同じ場所に比較展示されていて、あー! 2000年前に、もうこんな技術と美的価値観があったのかと、時を超えて驚かされる。
そこには古代ギリシャ的な「抽象と理想」を取り入れながらも、同時に人文主義と人間中心主義のテイストが芽生え始めている。

昔讃えられた人間の肉体と精神の理想美に回帰しつつも、個々の人間の現実の姿が問われ始めた文芸復興期。全ての哲学はソクラテス的な形而上のものとアリストテレス的な個別のものへとその源流を辿るというが、あたかもそのミックシチュアを試みたような作品が置かれているのは興味深い。

また、AD70〜75年頃起きたベスビオ山の噴火によって、灰に埋もれたポンペイなどの街々から掘り出されたフレスコ壁画も印象的であった。そこには、ギリシャ神話の頽廃的なモチフが描かれており、当時それはローマ皇帝を神として崇拝する場所に置かれていたのだ。
そのような頽廃的芸術が好まれ、人間を神とする偶像礼拝が頂点を極めた末に、一つの帝国、一つの偉大な文明は瓦解して行ったように思えてならない。
かつての日本も、そうではなかったのか。我々の生きる現代日本の家の壁に飾られているのは、どんなフレスコ画なのだろう?

マタイ福音書 
4:8 次に悪魔は、イエスを非常に高い山に連れて行き、この世のすべての国々とその栄華とを見せて
4:9 言った、「もしあなたが、ひれ伏してわたしを拝むなら、これらのものを皆あなたにあげましょう」。
4:10 するとイエスは彼に言われた、「サタンよ、退け。『主なるあなたの神を拝し、ただ神にのみ仕えよ』と書いてある」。
4:11 そこで、悪魔はイエスを離れ去り、そして、御使たちがみもとにきて仕えた。


(夜越山祈りの家キリスト教会 牧師)