同労者

キリスト教—信徒の志す—

賛美歌物語

— 聖歌590番「救い主イエスと」 —

     作詞;ファニー J.クロスビー (1820-1915)
     作曲;ロバート ローリー    (1826-1899)
     引照;「人の歩みは主によって確かにされる。
         主はその人の道を喜ばれる。」(詩篇 37:23)


<本コラムは「野の声|木田惠嗣のホームページ:賛美歌物語:
(これは、101 HYMN STORY by Kenneth W. Osbeck(KREGEL) の中から、有名な賛美歌を選んで、適宜、翻訳し、週報に連載したものです。)から許可をえて転載。

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     この愛唱される福音賛美歌は、祈りに対する直接の答えを得た後の神への感謝を表現したものでした。ある日、ファニー・クロスビーはどうしても五ドル必要で、このお金をどこから手に入れたら良いかわからないでいた。いつものように、彼女は祈り始めた。数分もすると、一人の見知らぬ人が、ちょうどその金額を持って、彼女の部屋の入り口に現れた。「私は、この出来事を、神が、私の祈りに答えて、この親切な人の心に働き、そのお金をもたらしたと信じる以外に、どう説明して良いかわからない。私が最初に思ったことは、主が私を導く道は何と素晴らしいことかということです。私は、すぐに詩を作り、ローリー博士が曲を付けてくださった。」と彼女は書いている。

     この賛美歌が、最初に日曜学校賛美歌集「ブライテスト・アンド・ベスト」の中に収められたのは、1875年、ウィリアム・H・ドーンとロバート・ローリーの要求に従ってであった。ファニー・ジェーン・クロスビーは、卑しい両親のもと、1823年3月24日、ニューヨークのサウスーストに生まれた。彼女は生まれて6週にして、不適当な治療によって盲目となった。彼女は、その生涯を通じて、ニューヨークの聖ヨハネメソジスト監督教会の忠実な会員であった。彼女は、ニューヨークの盲学校で教育を受けた。1847年から1858年まで、彼女は、教師として、この学校に奉職した。1858年、彼女は、盲目の音楽家アレクサンダー・バン・アルスタインと結婚した。彼は、盲人専門学校の非常に尊敬された教師であった。彼女の初期の作品は、主として、非宗教的なものであった。彼女の書いた有名な歌「大草原の花ロザリー」は、彼女に3000ドルという、当時では多大の額の印税収入をもたらした。

     教会音楽家として良く知られたW.B.ブラッドベリーの影響によって、彼女は40代の初めごろ、福音賛美歌の抒情詩を熱心に作詞するようになり、全地で最も幸福な被造物となった。ファニー・クロスビーは、まず、ひざまづいて熱心に祈り、神の導きを求めることなしに、賛美歌の詞を作ることは決してなかったと言われている。彼女はまた、いつも携帯していた聖書と一緒に持っていた、小さなアメリカ国旗によって、その性格が知られる。その生涯を通じて、彼女は、アイラ・D.サンキーや、Wm.H.ドーン、ジョン・スウェーニー、ジョージ・ステビンズ、ジョージ・ルート、ウィリアム・カークパトリックなど、その時代の指導的福音音楽家たちと、その文筆活動を通して交際した。

     ファニー・クロスビーの作詞した他の賛美歌には、「つみとがをゆるされ(聖歌232番)」「わざをなしおえて(聖歌646番)」「罪にしずむなが友に(聖歌526番)」「いつかは『さらば』と(聖歌640番)」などがある。(訳者注;ファニー・クロスビーの作品は聖歌に24篇収められている)

     この賛美歌のメロディーを作曲したロバート・ローリーは、1826年3月12日、ペンシルベニア州フィラデルフィアに生まれた。彼は後に、東部中で指導的ないくつかのバプテスト教会の優れた説教者であり、牧会者として知られるようななった。音楽と、賛美歌学とを、彼は好んで学んだが、常に、余技としてであった。後に、ウイリアム・ブラッドベリーの死に際して、ローリーはビッグロー出版社の音楽編集者として選ばれた。彼の出版物の質の良さは、19世紀後半のアメリカの教会音楽運動に多大の刺激を与えたと言われている。  ロバート・ローリーは、また、「はかのなかに(聖歌172番)」「めぐみある主(聖歌487番)」などの有名な賛美歌の作曲をも手がけた。

       * * * * * *
    さらにイエスの如くならんため
     我が救い主をわが中に住ませ奉らん 
    我が魂に平和と愛とを満たし
    われを柔和な鳩の如くなさん
     更にイエスの如くならまほし
    われこの地上の旅路を歩むかぎりは
     心の貧しき者とならんため
      我が救い主をわが中に住ませ奉らん
     もし彼からすの叫びを聞き
     彼の注意深き目すずめの落つるを 見給わば
      必ずわが呼ぶ声にも聞き給うべし
     彼はわれにいかに生くべきかを教え
    わが全ての罪深き思いを赦し給う
     いよいよ心の清き者とならんため
     我が救い主をわが中に住ませ奉らん

     我が祈りは更にイエスの如くならん事
     日毎イエスの如くにならん事
     憩わせ給え彼のかたえ
     静かなる流れの滑りいずるところに
     彼にありて生まれ
     恵みによりて新たにせられ
     彼の愛によりてわが意志従わせらる 
     いよいよ信仰に富まんため
     我が救い主をわが中に住ませ奉らん
    ファニー・J.クロスビーの 1867年の作品