同労者

キリスト教—信徒の志す—

聖書の植物

— 砂漠の植物から —

 写真と斜体の解説文は、廣部千恵子氏のホームページ「聖書の植物」から同氏の許可により掲載。
 詳細は同氏のホームページ

http://www2.seisen-u.ac.jp/~hirobe/2005feild2.htm#f10

又は「新聖書植物図鑑」(廣部千恵子著、横山匡写真、教文館発行)をご覧下さい。

えにしだ ――>レタマ・ラエタム、ローテム、シロレダマ
Retama raetam
マメ科Retama属
rothem broom tree,white bloom

 植物2

彼自身は荒れ野に入り、更に一日の道のりを歩き続けた。彼は一本のえにしだの木の下に来て座り、自分の命が絶えるのを願って言った。「主よ、もう十分です。わたしの命を取ってください。わたしは先祖にまさる者ではありません。」彼はえにしだの木の下で横になって眠ってしまった。(列王記上19:4~5)

この聖書の箇所はエリヤがイザベルの魔の手を逃れてベエル・シェバから更に砂漠に入り込んだ時の記載である。この辺りはシロレダマが沢山生えている。
対応箇所は新改訳でもえにしだで、口語訳だけれだまになっている。れだまはシロレダマと異なり、黄色の花の咲くマメ科エニシダ属のSpartium junceum(Spanish broom, Rush broom)である。この植物は有毒であるが、花は極少量で利尿や下剤の目的で、種は下剤として使用している所もある。シロレダマは砂漠で深く根を張り、水脈にまでその根を伸ばすので、乾燥した砂漠の乾季でも枯れないでいる。冬に毛様の葉が生えるが、2~3週間で落ちてしまう。春、ネゲブや海岸地帯、サマリアで白っぽい花が咲き、一面に白くなり美しい。えにしだCytisus scopariusは同じマメ科に属するが、ヨーロッパ中・南部に原産し黄色の花の咲く植物で、有毒植物で葉にはsparteineがあり、解熱に使用している。イスラエルに咲いている縁が紫がかった白の花のシロレダマとは異なる。ヨブ30:4にも同じ植物が出てくる。
あかざの葉を摘み れだまの根を食糧としていた。(新共同訳)
彼らはやぶの中のおかひじきを摘み、えにしだの根を彼らの食物とする。(新改訳)
彼らは、ぜにあおいおよび灌木の葉を摘み、 れだまの根をもって身を暖める。(口語訳)
新改訳はえにしだとなっているが、口語訳と新共同訳ははれだまとなっている。これも違う植物である。同じローテム(~t,ro)というヘブライ語に対して、同じ聖書でも異なる訳を使用している・
シロレダマは根や幹を炭にする。シロレダマの炭は硬く、上質で、火持ちがよい。そこでつい最近まで、ベドゥインたちはこの炭を作って売っていた。しかしローテム保護の為に今はやたらに伐採することは禁止されている。このローテムの炭は火持ちが良いので、安息日の料理を温めて置くのに使用した。ユダヤ人は安息日に仕事をすることを禁じられているので、ローテムの火に灰をかけてその上に鍋を置いておいたのである。このことを考えに入れると植物の名を直せば、口語訳のようにローテムの根で身を暖めるのがよい訳であろう。ローテムの根は硬くて食べられないし、実は有毒である。
詩編120:4では
勇士の放つ鋭い矢よ えにしだの炭火を付けた矢よ。(新共同訳)
勇士の鋭い矢、それに、えにしだの熱い炭火だ。(新改訳)
ますらおの鋭い矢と、えにしだの熱い炭とである。(口語訳)
とすべてえにしだになっている。これはローテムの炭のことを言っているのである。

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