同労者

キリスト教—信徒の志す—

JSF&OBの部屋

主の器の素地

石井 和幸

「人が、若い時に、くびきを負うのは良い。それを負わされたなら、ひとり黙ってすわっているがよい。」 (哀歌 3:27-28)

 私たちの教会が所属する聖泉連合では、かつて毎年3月最終金曜から日曜にかけて、「総会・聖会」が東京で行われていました。金曜と土曜の夜に聖会があり、日曜日は合同礼拝がありました。仙台教会の信者も家族総出で東京まで出かけていったものです。土曜日の日中は教役者会、六部委員会、総会議事会があり、それらに出席する必要がない若者、子供達は、東京で遊ぶ一日でありました。小さな頃は母や妹達と上野動物園や東京タワーにいったりしました。大学生になると聖会後から始まる青年セミナーの準備で、一人図書館にこもっていた時もありました。ただ、大抵は、お兄さん、お姉さん達が子供達を連れて、時には東京の教会の友達も加わって、遊園地にいくか、プロ野球のオープン戦を観に行くか、いづれかのパターンでした。
 遊園地は一日中楽しめるのですが、お金がかかることがネックでした。となると、プロ野球のオープン戦が、中学生以下の入場料なんぞ大した金額ではないので、引率するには気を遣わなくて丁度いいのですが、3月の野球の試合は寒いし、おまけに、野球が面白いのは一部の人だけで、あとは試合が盛り上がるシーンも少なければ、だんだん飽きてくる・・・「去年は野球観にいったけど今年は遊園地にしない?」と言われるのが多かった記憶があります。
 ある時、私は仙台教会の数名の青年とともに、牧師先生の子供M君とSさんを聖会期間中の土曜日、預かることになりました。先生は私に、遊園地ではなくプロ野球のオープン戦に連れて行って欲しいと頼みました。M君とSさんはまだ小学校低学年。はたして野球場でどれくらいもつものか・・・と思いつつ、神宮球場の外野席にみんなで座りました。2人は私の予想に反して、試合が終わるまでずっと、野球場で何かしらの興味をもって、楽しく過ごしてくれたのです。最も、私や他のお兄さんたちがお菓子やジュースを買ってきたり、ミニオペラグラスやブーブー笛、メガホンを買ってあげたりと工夫をこらした甲斐もありました。ですが、2人とも私が一番恐れていた「つまんない」「帰ろうよ」の言葉を一言も言わなかったのです。・・・2人は牧師家庭において、常に置かれた環境の中、与えられた状況の中で、周りの人とコミュニケーションを取りながら、楽しく過ごすことの大切さを日頃から擦り込まれていたのでした。
 Sさんは現在中学生で、ミルフィーユというコーラスグループの一員として、讃美をすることに励んでいます。先日、その練習を見て、厳しさの中に彼女たちが一生懸命励む姿を見て、私はSさんが小さかった頃、一緒に神宮球場へ行ったことを思い出したのです。そして、自分のやりたい事、自分の人生を展開していこうとする前に、まず神の御手の下で、与えられたところに生きている姿、それを自らの喜びとしている姿を私は確認する事が出来ました。
 先月、私は今まで経験したことがない大きな仕事を任されました。他に適任者がいるはずなのに、何で自分が責任者になるのか・・・といった問いかけが自らにありました。しかし、私は自分が新入社員だった頃、毎日工場の事務所で、読めなくて訳がわからない図面を見ながら、(私は経済学部出身で、工業系の知識はありませんでした)時には泣きながら仕事したこと。「クリスチャンじゃなければ、神の召しでなければとっくに会社を辞めていました。」と告白したこと。そんなエピソードを思い起こしながら、なお神の召しに生きることを覚えました。 これからの教会を担う次世代の人達も、「やりたい事」をする器というよりも、「遣わされたところで、賜物を活かして生き抜く」器、それが「キリストの苦しみの欠けたところを満たす」(コロサイ1:24)器だと思うのです。私がかつて「子供達を野球場に連れて行っても、面白くないだろう」と勝手に予測したように、大人たちが「教会にいても、子供は面白くないだろう」と心のどこかで思うのではなく、まず親であり、先輩である自分が神の恵みと真理に満たされていなければなりません。乳児である私の娘ももう、「礼拝堂で静かにする」訓練が始まっています。「まだ、わからないよ。そのうち大きくなったら訓練すればいい」と思うのではなく、示されている神の豊かなご計画と導きに、幼子をも献げていく決意です。
(仙台聖泉キリスト教会 会員)

十字架に主なるイエスは 世の罪贖い   死に勝ち 甦り 今日も変わらず 生きたもう 主イエスと共に明日を 我また生き抜かん   恐れは喜びと変わる 救いに満たされて 幼子抱く我は 御恵み感謝せん   大いなる約束を この子に賜う 主のゆえに いつ日か川を渡り 御国に近づき   最後の戦いに 勝ちて栄えの主に 見えん     インマヌエル讃美歌 四四一

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