同労者

キリスト教—信徒の志す—

聖書研究

— 罪について(40)—

野澤 睦雄


「私たちは肉にあって歩んではいても、肉に従って戦ってはいません。私たちの戦いの武器は、肉の物ではなく、神の御前で、要塞をも破るほどに力のあるものです。私たちは、さまざまの思弁と、神の知識に逆らって立つあらゆる高ぶりを打ち砕き、すべてのはかりごとをとりこにしてキリストに服従させ、また、あなたがたの従順が完全になるとき、あらゆる不従順を罰する用意ができているのです。」(コリントⅡ 10:3-6 )

2.各論
(5)高ぶり < 5 >
 ユダ王国の主立った人々がバビロンに捕囚となったとき、バビロンの王ネブカデネザルはシャファンの子アヒカムの子ゲダルヤという人物をユダの総督とし、残りの貧民たちを委ねました。
 シャファンはヨシア王の書記官でした。ダビデの王朝でヨシヤほどよく神に仕えた人はいません。ヨシヤが宗教改革をし、神殿の修理をさせたので、神殿にあった律法の書が見つかりました。シャファンはそれをヨシヤに報告し王の前で朗読しました。
ヨシヤはそれを聞いて、その宗教改革は律法に従ったものとなっていきました。
 残念ながらヨシヤはエジプトの王パロ・ネコと戦争して若くして死に、エレミヤが彼のため哀歌を書きました。エレミヤはどんなに落胆したことでしょう。
 ヨシヤの後を継いだヨシヤの子どもたちは、主を信じる宗教には全然ダメな人物たちでした。ヨシヤの子エホヤキムの時のできごとにこう記されています。
「シャファンの子アヒカムはエレミヤをかばい、エレミヤが民の手に渡されて殺されないようにした。」(エレミヤ書 26:24)
ユダ王国はエホヤキムの死後その子エホヤキンが王となりましたが、彼はバビロンに連れて行かれ、
(ユダヤ人たちが、バビロンからパレスチナへの帰還を許されて帰ってきたとき、総督として指揮した人ゼルバベルは、エホヤキンの孫です。)
ヨシヤの四男ゼデキヤが王となりました。しかしゼデキヤはバビロンの王との約束を守らなかったため、エルサレムは完全に破壊されました。

 そして、はじめに書いた「バビロンの王ネブカデネザルは、シャファンの子アヒカムの子ゲダルヤを、ユダの地に残った残りの民の上に総督とした。」(列王記Ⅱ 25:22)と進展していきました。
 ユダの残っていた人々の他に、戦争難民として近隣の諸国に逃れていた人々の一部がゲダルヤのところに集まってきました。
その中には軍を率いた将校もいました。ネタヌヤの子イシュマエル、カレアハの子ヨハナン、などの名が記されています。
その中でネタヌヤの子イシュマエルは恐らくアモン人のところにいたのでしょう。そして、アモン人のためにゲダルヤを暗殺することを企んでいました。その企みがヨハナンに漏れ、ヨハナンはゲダルヤに忠告しましたが、ゲダルヤはそれを信用しませんでした。
「ところが第七の月に、王族のひとり、エリシャマの子ネタヌヤの子イシュマエルは、王の高官と十人の部下を連れて、ミツパにいるアヒカムの子ゲダルヤのもとに来て、ミツパで食事を共にした。そのとき、ネタヌヤの子イシュマエルと、彼とともにいた十人の部下は立ち上がって、シャファンの子アヒカムの子ゲダルヤを剣で打ち殺した。イシュマエルは、バビロンの王がこの国の総督にした者を殺した。ミツパでゲダルヤとともにいたすべてのユダヤ人と、そこに居合わせたカルデヤ人の戦士たちをも、イシュマエルは打ち殺した。」(エレミヤ書 41:1-3)
イシュマエルは本当にゲダルヤを殺しました。それに対して、
「カレアハの子ヨハナンと、彼とともにいたすべての将校は、ネタヌヤの子イシュマエルが行ったすべての悪を聞いたので、部下をみな連れて、ネタヌヤの子イシュマエルと戦うために出て行き、ギブオンにある大池のほとりで彼を見つけた。・・・ネタヌヤの子イシュマエルは、八人の者とともにヨハナンの前をのがれて、アモン人のところへ行った。」(エッレミヤ書 41:11-15)

その後が問題です。
ネブカデネザルがユダの総督に任命したゲダルヤとバビロンの兵士たちをイシュマエルが撃ち殺したので、恐らくまたバビロンから軍がきて皆滅ぼされると考えたのでしょう。それで非常に恐れ、エジプトに逃げていこうとしました。
「カレアハの子ヨハナンと、彼とともにいたすべての将校は、ネタヌヤの子イシュマエルがアヒカムの子ゲダルヤを打ち殺して後、ミツパから、ネタヌヤの子イシュマエルから取り返したすべての残りの民、すなわちギブオンから連れ帰った勇士たち、戦士たち、女たち、子どもたち、および宦官たちを連れて、 エジプトに行こうとして、ベツレヘムのかたわらにあるゲルテ・キムハムへ行って、そこにとどまった。」 (エレミヤ書 41:16-18)
 彼らはそこで、エレミヤによって神のみこころを示して貰おうとしました。
「すべての将校たち、カレアハの子ヨハナン、ホシャヤの子イザヌヤ、および身分の低い者も高い者もみな、寄って来て、預言者エレミヤに言った。「どうぞ、私たちの願いを聞いてください。私たちのため、この残った者みなのために、あなたの神、主に、祈ってください。ご覧のとおり、私たちは多くの者の中からごくわずかだけ残ったのです。あなたの神、主が、私たちの歩むべき道と、なすべきことを私たちに告げてくださいますように。」・・・
彼らはエレミヤに言った。「主が私たちの間で真実な確かな証人でありますように。私たちは、すべてあなたの神、主が私たちのためにあなたを送って告げられることばのとおりに、必ず行います。私たちは良くても悪くても、あなたを遣わされた私たちの神、主の御声に聞き従います。私たちが私たちの神、主の御声に聞き従ってしあわせを得るためです。」(エレミヤ書 41:1-6)

 その時エレミヤに告げられた神のことばはこうでした。
「『もし、あなたがたがこの国にとどまるなら、わたしはあなたがたを建てて、倒さず、あなたがたを植えて、引き抜かない。わたしはあなたがたに下したあのわざわいを思い直したからだ。あなたがたが恐れているバビロンの王を恐れるな。彼をこわがるな。──主の御告げ──わたしはあなたがたとともにいて、彼の手からあなたがたを救い、彼の手からあなたがたを救い出すからだ。わたしがあなたがたにあわれみを施すので、彼は、あなたがたをあわれみ、あなたがたをあなたがたの土地に帰らせる。』・・・今、ユダの残りの者よ、主のことばを聞け。イスラエルの神、万軍の主は、こう仰せられる。『もし、あなたがたがエジプトに行こうと堅く決心し、そこに行って寄留するなら、 あなたがたの恐れている剣が、あのエジプトの国であなたがたに追いつき、あなたがたの心配しているききんが、あのエジプトであなたがたに追いすがり、あなたがたはあそこで死のう。 エジプトに行ってそこに寄留しようと決心した者たちはみな、そこで剣とききんと疫病で死に、わたしが彼らに下すわざわいをのがれて生き残る者はいない。』・・・」(エレミヤ書 42:7-22)

 彼らは「主の仰せられるとおりにします。」と言ったにもかかわらず、エレミヤから神のことばが告げられたとき、次のようにしました。
「すると、ホシャヤの子アザルヤと、カレアハの子ヨハナンと、高ぶった人たちはみな、エレミヤに告げて言った。「あなたは偽りを語っている。私たちの神、主は『エジプトに行って寄留してはならない』と言わせるために、あなたを遣わされたのではない。ネリヤの子バルクが、あなたをそそのかして私たちに逆らわせ、私たちをカルデヤ人の手に渡して、私たちを死なせ、また、私たちをバビロンへ引いて行かせようとしているのだ。」 カレアハの子ヨハナンと、すべての将校と、すべての民は、「ユダの国にとどまれ」という主の御声に聞き従わなかった。

そして、カレアハの子ヨハナンと、すべての将校は、散らされていた国々からユダの国に住むために帰っていたユダの残りの者すべてを、男も女も子どもも、王の娘も、それに、侍従長ネブザルアダンが、シャファンの子アヒカムの子ゲダルヤに託したすべての者、預言者エレミヤと、ネリヤの子バルクをも連れて、 エジプトの国に行った。彼らは主の御声に聞き従わなかったのである。」(エエミヤ書43:2-7)

 彼らがエレミヤによって示された神のことばに従わなかったのは「高ぶり」であったと記されています。
 冒頭に掲げたパウロのことば、「さまざまの思弁と、神の知識に逆らって立つあらゆる高ぶり」を考えさせられます。

(仙台聖泉キリスト教会員)