読者の広場 <短歌>
— 大岩の陰(一) —
鈴木 健一
65歳で定年退職してもう6年になりますが、十一年前に発病した潰瘍性大腸炎も徐々に回復し、日々ゆったりとした時間の流れの中で、生活しております。
数年前の12月末、家族で箱根に逗留した時、ケーブルカーで山頂に登りました。氷点下の冷気で身をちぢめて歩いていると、妻が日の当たる崖の下の窪みを見つけてきました。草が枯れたまま残っている十畳ほどの平地で、隠れ家のようでした。その時の心地よさが記憶に残って、まるで引退後の自分たちの毎日のようだと感じて、歌にしました。
そして今は、この「大岩」が、イエス様のような気がしています。
枯れ草に 陽かげの にほふ 崖の窪(くぼ) ありきと 先行く 妻もどりきて |
山頂の 突き刺す冷気 大岩の 陰にし 入れば 暖(ぬる)む 陽だまり |
風荒(すさ)ぶ 音を聞きつつ 大岩の 陰の 陽だまり 板チョコレート |
(インマヌエル大宮キリスト教会 会員)