同労者

キリスト教—信徒の志す—

聖書研究

— 罪について(21)—

野澤 睦雄


「もし、兄弟と呼ばれる者で、しかも・・・、貪欲な者、・・・いたなら、そのような者とはつきあってはいけない、いっしょに食事をしてもいけない、ということです。」 (コリントⅠ 5:11)

<2.各論>
(3)貪欲 <4>


 今回は、アブラハムと分かれたときのロトの選択について考えましょう。

「それで、アブラムは、エジプトを出て、ネゲブに上った。彼と、妻のサライと、すべての所有物と、ロトもいっしょであった。アブラムは家畜と銀と金とに非常に富んでいた。・・・アブラムといっしょに行ったロトもまた、羊の群れや牛の群れ、天幕を所有していた。その地は彼らがいっしょに住むのに十分ではなかった。彼らの持ち物が多すぎたので、彼らがいっしょに住むことができなかったのである。そのうえ、アブラムの家畜の牧者たちとロトの家畜の牧者たちとの間に、争いが起こった。またそのころ、その地にはカナン人とペリジ人が住んでいた。そこで、アブラムはロトに言った。「どうか私とあなたとの間、また私の牧者たちとあなたの牧者たちとの間に、争いがないようにしてくれ。私たちは、親類同士なのだから。全地はあなたの前にあるではないか。私から別れてくれないか。もしあなたが左に行けば、私は右に行こう。もしあなたが右に行けば、私は左に行こう。」ロトが目を上げてヨルダンの低地全体を見渡すと、主がソドムとゴモラを滅ぼされる以前であったので、その地はツォアルのほうに至るまで、主の園のように、またエジプトの地のように、どこもよく潤っていた。それで、ロトはそのヨルダンの低地全体を選び取り、その後、東のほうに移動した。こうして彼らは互いに別れた。アブラムはカナンの地に住んだが、ロトは低地の町々に住んで、ソドムの近くまで天幕を張った。ところが、ソドムの人々はよこしまな者で、主に対しては非常な罪人であった。」(創世記 13:1-13)

いきさつについて少し触れますと、
アブラム(アブラハム)の父テラはカルデヤのウル(メソポタミヤ、ユーフラテス川の下流の方に位置していた)の出身で、アブラムの他に、ナホルとハランという息子がいたことが記されています。今回取り上げるロトは、そのハランの息子です。ハランはウルで死にました。聖書に書かれていないと思いますが、アブラハムは自分の妻サラを異母妹だと証言していますので、サラはテラの娘であったことになります。
テラはアブラムとロトを連れて、カナンの地に行こうと旅立ちましたが、アラム人の地ハラン(ユーフラテス川の上流に位置します)に住みつきそこで死にました。
アブラムは神のご命令で、
「アブラムは主がお告げになったとおりに出かけた。ロトも彼といっしょに出かけた。アブラムがハランを出たときは、七十五歳であった。アブラムは妻のサライと、おいのロトと、彼らが得たすべての財産と、ハランで加えられた人々を伴い、カナンの地に行こうとして出発した。こうして彼らはカナンの地に入った。」(創世記12:4-5)のでした。
 間を省略しますが、彼らは飢饉のためにエジプトに行き、そこで大きな財産を所有するようになりました。彼らの所有を「エジプトの富」と表現するひとたちがいますが、エジプトは「この世」の象徴であってその表現は当たっていると思います。
アブラムとロト、二人とも「エジプトの富」を豊かにもつようなったら一緒にいられなくなりました。それがはじめに引用したみことばです。

 一緒にいられなくなったので「さあどうしようか?」ということを決めていかなければなりません。そこでアブラムがロトに「あなたが好きなところを取りなさい。私は反対の方向に行くから。」と提案しました。
 ロトは「エジプトの富」を十分持っていたのに、もっと得られそうなところ・・・ソドム・・・を選択しました。「貪欲」が彼の動機でした。

 ロトには息子のことが書かれていません。娘が少なくとも4人はいたことになります。神がソドムを滅ぼされるとき、自分のところに未婚の娘が二人、ソドムの男に嫁いだ娘が二人以上・・婿たちと表現されていますので。

 ロトがソドムで死ななかったのは、神のアブラハムに対する思いやりです。
「こうして、神が低地の町々を滅ぼされたとき、神はアブラハムを覚えておられた。それで、ロトが住んでいた町々を滅ぼされたとき、神はロトをその破壊の中からのがれさせた。」(創世記 19:29)

  ロトはツォアルという町に逃れましたが、彼はそこは滅ぼされないと約束されたのに信じることができず、その町をでてほら穴に住みました。そのため娘たちを相手にしてくれる男がいなくて、娘たちは自分の父、ロト自身の子を産みました。その子たちがモアブ人とアモン人の祖先で、この民族は神の民に敵対するものとなりました。娘たちは未婚のうちから既にソドムの風潮に染まってしまっていたのだと理解されています。

 ルツによってモアブ人が、またソロモンの妻となったレハブアムの母によってアモン人がキリストの家系に加えられていることは、アブラハムのロトに対する思いを神がそこまで大切にして下さったのではないでしょうか。

 ロトが貪欲に動かされて進んだことがいかに悲しい結果を生んだかを思います。
貪欲にくれぐれも警戒しましょう!

(仙台聖泉キリスト教会員)