同労者

キリスト教—信徒の志す—

聖書研究

— 罪について(23)—

野澤 睦雄


「ラバンがあなたにしてきたことはみな、わたしが見た。・・わたしはベテルの神。あなたはそこで、石の柱に油をそそぎ、わたしに誓願を立てたのだ。さあ、立って、この土地を出て、あなたの生まれた国に帰りなさい。」(創世記 31:12-13)

<2.各論>
(3)貪欲 <6>


 冒頭のみことばは、神(の御使い)がヤコブに言ったことばです。・・創世記には御使いが言ったと書かれていますが、そのことばは神ご自身のことばです。そのような記事はいくつもあり、イエスご自身がみ使いの姿をとられたと理解されています。
 今回はラバンという人物について学んで見ましょう。
ヤコブとラバンのやりとりは旧約聖書を読まれたり、旧約聖書を引用して説教がされる教会の皆さんにはなじみの箇所でしょう。
 ラバンはヤコブの母リベカの兄にあたるヤコブの叔父です。
リベカにそそのかされて、兄エサウが受けようとしていた父イサクの祝福を横取りしたことが事の発端です。
怒りに燃えたエサウは「父イサクが死んだらその後、ヤコブを殺してやるっ」・・と息巻いたことが周囲に伝わりました。
ヤコブをそそのかしたリベカは心配して、ヤコブを兄ラバンのところに逃亡させ、かくまってもらうことにし、そのように事が進みました。
エサウはカナン人の女たちと結婚していて、その女たちのためにリベカは「死にたい」と思うほどでした。
どんな女たちだったのでしょう?
どんなやりとりがリベカとの間にあったのでしょうか?
それにも興味がわきますが、想像する意外に知る手段はありません。つまり分からないということです。
(クリスチャンの若者が、容姿に惚れ込んで不信者の女と結婚すると同じ事がおきます。)
しかしリベカは、ヤコブもカナン人の女と結婚してはたまらない。兄ラバンの娘たちの中から結婚相手を選んでもらいたいと願いました。
父ヤコブも目を覚ましたように、積極的にヤコブをラバンのいるパダンアラムに送り出し、ラバンの娘たちのなかから妻をめとれとヤコブに命令しました。
 こうしてヤコブがラバンのところに行ったとき、ラバンの娘ラケルが父の羊を飼っていました。
これは推測ですが、娘のラケルに自分の羊の群れを飼わせていたということは、羊の数も少なく、息子たちはずっと年下だったのではないかと思われます。ラバン自身はもう80歳を越えた年齢で自分で羊を飼っていなかったということでしょう。
(リベカがイサクと結婚したとき、リベカはまだ十代、ラバンが20代そこそこであったとしても、それからもう60年も経っていましたから。)
父イサクは羊飼いでしたが、ヤコブ自身が羊を飼っているということはこのラケルとの出会いまで書かれていません。二人が出会った時のやりとりから、ヤコブは羊を飼うことに練達していたことが分かります。父イサクの羊を一緒に飼っていたのでしょう。
 1ヶ月後、ラバンから自分のところで働く報酬を上げようといわれ、7年の労働でラケルを妻としてもらう約束をしました。妻は金で買うものでした。いまでもそうであることが中東の情報に伝わってきます。
「7年頑張ればあの娘をもらえる」ということを楽しみに、ヤコブには、「彼女を愛していたので、それもほんの数日のように思われた。」のでした。
7年経って、ラバンはヤコブと自分の娘の結婚の祝宴をもよおしましたが、当日ヤコブのところに姉のレアをやりました。
気づいて怒鳴り込んできたヤコブにラバンはさらっと答えます。
「この地方の習慣で、姉より先に妹を結婚させないのだ。だからもう7年働け。7年は約束だけでよい。ラケルもすぐおまえにやる。」と。
ラバンは不誠実でした。そうやってヤコブをなだめて娘2人と引き換えに、結局14年間ヤコブを使役しました。
後に二人の娘は父ラバンを「私たちを売った」と酷評します。
ラバンのこの行動は、ヤコブが羊を飼うことに長けていたので、彼を使い続けたかったからでしょう。
ヤコブは妻をめとるという目的が果たされたら、イサクのところに帰るというのが最初の設定でした。
14年の間に、いきさつからヤコブはラバンの2人の娘とむすめの2人の婢(はしため)の4人を妻とすることとなり11人の子どもが与えられました。
ラケルに子どもが生まれたので、彼は故郷に帰りますと、ラバンに言い出したのですが、ラバンはまだヤコブに帰って欲しくなかったので、今度は金銭的な報酬で・・羊をわけてやる・・ということにしてヤコブを引き留めました。
それで更に6年間ヤコブはラバンのところにとどまりました。
 背景に神ご自身の采配がありますが、ヤコブの群れは大きくなり、ラバンの群れはそうではなかったので、ラバン自身もラバンの息子たちもヤコブをよく思わなくなってきました。
「さてヤコブはラバンの息子たちが、「ヤコブはわれわれの父の物をみな取った。父の物でこのすべての富をものにしたのだ」と言っているのを聞いた。ヤコブもまた、彼に対するラバンの態度が、以前のようではないのに気づいた。」(創世記 31:1-2)
それでヤコブはラバンのところから逃亡を図りましたが、ラバンはヤコブを追跡して彼に追いつきました。しかし神が介入されて、事なく分かれました。

ラバンの一連の行動の根底に、彼の「貪欲」があります。

(仙台聖泉キリスト教会員)