同労者

キリスト教—信徒の志す—

論説

— ペンテコステに学んでおくべきこと(8) —

「主は御霊です。そして、主の御霊のあるところには自由があります。私たちはみな、顔のおおいを取りのけられて、鏡のように主の栄光を反映させながら、栄光から栄光へと、主と同じかたちに姿を変えられて行きます。これはまさに、御霊なる主の働きによるのです。」(コリントⅡ 3:18)

 「霊性」ということばが、福音派のキリスト者によく用いられますが、いまでは福音派だけでなく、キリスト教を掲げる人々にひろく関心をもたれ、更にキリスト教以外に宗教を信じる人々にも、また一般の世の中のひとびとにさえも広がっていて、「人生の目的や意義を探求し、愛や正義を希求し、究極的、絶対的存在に対する畏怖の念を抱く宗教心一般を、宗教学者は「霊性」という語で表現している」(内田和彦:新約聖書における霊性「福音主義神学会」、学会誌、037-3、p.1、2006年)そうです。
 しかし、私たちが普通「霊性」というときその意味はもっと狭く、真の神に関わることがらに対する心の姿勢によって示されるひとの霊の姿(あるいは「かたち」)といえるでしょう。

 それで今回は霊性をこの後者の意味に限定し、聖化と霊性の関係を考え、
1.霊性と信仰生活
2.霊性と神のかたち
3.内住のキリストによる霊性
について取り上げましょう。

1.霊性と信仰生活
 信仰生活は外面的なことであって、内面(本質)ではありませんが、この外側に現れることによってその内面を垣間見ることができます。他人を見るのではなく、自分を判断することが大切なことは言うまでもありません。

<説教>
説教は説教者の霊性の発露です。その神経験、祈りと神との交わり、日々の研鑽、説教者の生活のすべてが説教に滲み出てきます。ですから説教に恐れを感じます。

<信者として様々のことがら>
 集会出席、聖書を読み祈る時をもつこと、教会に関わる様々の用を果たすことなどは、霊性と大いに関係があります。
 説教を先に掲げましたが、説教をどのように受け止め、そこに生きることができるか否かも霊性がかかわってきます。
またお互いに対する愛、それらのことがらも霊性を示す指標となるでしょう。

<富に対する姿勢>
「あなたがたは、神にも仕え、また富にも仕えるということはできません。」(マタイ6:24)
富が自分にとってどのような位置を占めているかは霊性の大切なことがらです。
私たちもそれに対するこころあり方次第でイエスに永遠のいのちに入る道を訊ねたあと、イエスのもとを悲しみつつさった若い役人のようになることでしょう。
「ところが、青年はこのことばを聞くと、悲しんで去って行った。この人は多くの財産を持っていたからである。」(マタイ 19:22)

<服従>
 神のみ旨に敏感であること、そして察知したその神のみ旨に従って生きることは霊性を示します。神が直接悟らせてくださることもあるでしょうが、神はあいだに人をおかれます。ですから、牧師に対する服従、こどもの時両親に対して服従することが大切です。また教会の中で特定の兄姉に導かれることもあります。神には従うが人に従うのは嫌だ、と言い出すのは神のみ旨ではありません。


2.霊性と神のかたち
 冒頭のみことばのとおり、私たちは
「御霊なる主の働きによって」「主と同じかたちに姿を変えられて」
いきます。
 私たちは自分も含め、自分と接する信者がとる行動を通じて、その人の霊性を感じ取ります。それは、私たちの内に住んでおられる聖霊によって私たちがどのくらい「主と似た」行動をとるかを示しています。つまり「霊性」とは私たちを通して現される聖霊の特性の現れです。
先に引用した論文に著者はこう解説しています。
「キリスト者の霊性の形成は神のかたちの回復に他ならない。」 (内田和彦:前掲、p.19)


3.内住のキリストによる霊性
 キリストが私たちに内住してくださるとは、もちろんキリストの霊である聖霊が内住してくださることです。それによって、私たちはキリストに似たものとならせていただきます。
先に「信仰」という視点で内住のキリストについて、パジェット・ウィルクスの「信仰の動力」から学びましたが、それを霊性という視点に置き換えましょう。そこに私たちに期待される理想の霊性があります。

1.み父の要求に対する信仰
 神のご要求されることがらに自分を明け渡すことのできる霊性。

2.み父の途(みち=手段、手順、経路)に対する信仰
 神が用いられる手段を信頼する霊性。

3.み父の能力に対する信仰
 神の能力を信じる霊性。

4.み父の意志に対する信仰
 神のみこころを行う霊性。

5.み父の賜物に対する信仰
 神が下さるものを受け入れる霊性。

6.み父のみことばに対する信仰
 神のみことばを信じる霊性。

7.み父の愛に対する信仰
 神の愛を信じる霊性

引用した論文、内田和彦:「新約聖書における霊性」を読んでおかれるといいでしょう。・・同労者ホームページ下欄にあるリンク「福音主義神学会、論文集」から入って、本論の全文を読むことができます。