同労者

キリスト教—信徒の志す—

聖書研究

— 万人祭司・万人予言者・万人王(第50回) —

野澤 睦雄

・・クリスチャンはみな預言者である。みな祭司である。また王である。キリストにあって、神は私たちを一体とし、そして王位に着けられた。
・・ C.E.ジェファソン(「教会の建設」から引用)

2. 旧約における三つの職務の考察(つづき)
2.3 王(つづき)

 王についての学びのはじめに引用した、アンドリュー・マーレーのことばに、「王の場合も祭司の場合も、力と影響力と祝福がその中心的な事柄です。」とありました。しかし、残念ながら、王についてその影響力が悪い方に民を率いる側に働いた記事に枚挙のいとまがないというのが事実です。けれども、王の力が恵みの側に豊かに働いた実例もあります。その実例として、ネヘミヤの働きを考えてみましょう。ネヘミヤはペルシャの王から派遣された総督であって、王ではありませんが、ここに言う王の働きをしました。
 ネヘミヤの働きとしてまずエルサレムの城壁の再建があげられます。彼はそのことのために仕えていたアルタシャスタ王の、総督としての任命と城壁の再建の命令を受けてユダに赴任したのでした。クロス王の命令を受けてユダに帰還した人々の実際の生活は大変なものでした。彼らは城壁のない土地に住み、彼らがいなかった時に住み着いた外国の人々・・そこは彼らの国になってしまっていたことでしょうが・・と一緒に生活しなければなりませんでした。ですから、城壁に守られた自分たちだけの生活圏を獲得できるか否かは、死活問題でした。しかし城壁は、ひたすら祈っていたら突然そこにできていた、などというようなものではありません。それを築く資金、労働が必要な上に、城壁の再建を望まない周囲の人々の攻撃を防ぎながらその仕事を進めなければなりませんでした。その仕事はネヘミヤ一人でできることではなく、一緒に労する人々が必要でした。彼は帰還していた人々を説得し、協力者を得、その勤めを進めました。妨害者たちは、一部のユダヤ人たちに取り入って、内部から分裂させようとしたり、直接彼を暗殺しようとしたり、工事現場に直接武力介入しようとしたりしました。その対処には知恵が必要でした。ついに彼はそれをやりとげました。
「こうして、城壁は五十二日かかって、エルルの月の二十五日に完成した。」(ネヘミヤ記 6:15)
 「こうして」の一言の記述には、なんと多くの事柄が含まれていたことでしょう。
 この工事には貧しい民も加わりました。彼らにとってその負担は大変なものでした。
「ある者は、「私たちには息子や娘が大ぜいいる。私たちは、食べて生きるために、穀物を手に入れなければならない」と言い、 またある者は、『このききんに際し、穀物を手に入れるために、私たちの畑も、ぶどう畑も、家も抵当に入れなければならない』と言った。またある者は言った。『私たちは、王に支払う税金のために、私たちの畑とぶどう畑をかたにして、金を借りなければならなかった。現に、私たちの肉は私たちの兄弟の肉と同じであり、私たちの子どもも彼らの子どもと同じなのだ。それなのに、今、私たちは自分たちの息子や娘を奴隷に売らなければならない。事実、私たちの娘で、もう奴隷にされている者もいる。しかし、私たちの畑もぶどう畑も他人の所有となっているので、私たちにはどうする力もない。』」(ネヘミヤ記 5:2-5)
 ネヘミヤは富んでいる人々が貧しい人々を顧みないことを怒りました。彼らを厳しく叱責し、貧しい人々に貸したものを取り立てない誓約をさせました。こうして、国の中の経済の問題に対処しました。
 ネヘミヤは、律法学者エズラに頼んで人々に律法を教えてもらい、人々の信仰を確かなものとするための宗教教育をしました。(ネヘミヤ記 8:1-18)
 また安息日と定められた仮庵の祭りからはじめて、年々の定められた聖会が行われるようにしました。安息日を守るだけでも、近隣の人々はその日が稼ぎどき出会ったが故に、大変な抵抗があったことが記されています。彼はそのように礼拝が、生活の一部となるように彼らを指導しました。
またそのためには、祭司、レビ人たちの生活が成り立たなければそれに従事していることができませんから、祭司、レビ人に献金が行き届くようにしました。
 帰還していた人々には、さらに大変な問題がありました。それは、周囲に住んでいる外国の人々と婚姻関係を結んだ人々が多数いたことでした。
「そのころまた、私はアシュドデ人、アモン人、モアブ人の女をめとっているユダヤ人たちのいるのに気がついた。 彼らの子どもの半分はアシュドデのことばを話し、あるいは、それぞれ他の国語を話して、ユダヤのことばがわからなかった。・・彼らを神にかけて誓わせて言った。『あなたがたの娘を彼らの息子にとつがせてはならない。また、あなたがたの息子、あるいは、あなたがた自身が、彼らの娘をめとってはならない。・・あなたがたが外国の女をめとって、私たちの神に対して不信の罪を犯し、このような大きな悪を行っていることを聞き流しにできようか。』」(ネヘミヤ記 13:23-28)
 ネヘミヤはそれに対処し、外国の女たちを離婚させ家に帰らせました。それら女性たちは既に子供を産んでいるものもいた、とありますから、どんなに大変であったことでしょう。娘を嫁がせた人々は、好意に悪意でむくいたと感じたにちがいありません。
 しかし、その故に、ユダヤ人たちは、イエス・キリストがおいでになる通路となる彼らの使命を果たすことができたのです。

(以下次号)
(仙台聖泉キリスト教会員)

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