同労者

キリスト教—信徒の志す—

聖書研究

— 万人祭司・万人予言者・万人王(第48回) —

野澤 睦雄

・・クリスチャンはみな預言者である。みな祭司である。また王である。キリストにあって、神は私たちを一体とし、そして王位に着けられた。
・・ C.E.ジェファソン(「教会の建設」から引用)

2. 旧約における三つの職務の考察(つづき)
2.3 王(つづき)

 王たちの「支配下にある人々に対する影響力」について、もう少し事例を取り挙げましょう。
 ソロモンの子レハブアムの時、国は二つに分裂し、北のイスラエル王国と南のユダ王国になり、イスラエルの王はヤロブアム、ユダの王がレハブアムでした。ヤロブアムは神を礼拝するために、自分の王国であるイスラエルの人々がユダのエルサレムにある神殿にいって礼拝することによって、やがてまたイスラエル全体がユダになびいてしまうことを恐れました。

 「ヤロブアムは心に思った。『今のままなら、この王国はダビデの家に戻るだろう。この民が、エルサレムにある主の宮でいけにえをささげるために上って行くことになっていれば、この民の心は、彼らの主君、ユダの王レハブアムに再び帰り、私を殺し、ユダの王レハブアムのもとに帰るだろう。』」(列王記I 12:26-27)

その対策として彼が持ち込んだものは、主である神への礼拝を止めることではなく、その礼拝の規定を変えることでした。

 「そこで、王は相談して、金の子牛を二つ造り、彼らに言った。『もう、エルサレムに上る必要はない。イスラエルよ。ここに、あなたをエジプトから連れ上ったあなたの神々がおられる。』それから、彼は一つをベテルに据え、一つをダンに安置した。このことは罪となった。民はこの一つを礼拝するためダンにまで行った。それから、彼は高き所の宮を建て、レビの子孫でない一般の民の中から祭司を任命した。そのうえ、ヤロブアムはユダでの祭りにならって、祭りの日を第八の月の十五日と定め、祭壇でいけにえをささげた。こうして彼は、ベテルで自分が造った子牛にいけにえをささげた。また、彼が任命した高き所の祭司たちをベテルに常住させた。彼は自分で勝手に考え出した月である第八の月の十五日に、ベテルに造った祭壇でいけにえをささげ、イスラエル人のために祭りの日を定め、祭壇でいけにえをささげ、香をたいた。」(列王記I 12:28-33)

 その本質は、イスラエルの人々がエジプトから出てきたとき、モーセが十戒をいただくために、シナイ山に登っていた間に、アロンが民衆に詰め寄られて、金の子牛の像をつくったのと同一です。

 「民はモーセが山から降りて来るのに手間取っているのを見て、アロンのもとに集まり、彼に言った。『さあ、私たちに先立って行く神を、造ってください。私たちをエジプトの地から連れ上ったあのモーセという者が、どうなったのか、私たちにはわからないから。』・・・そこで、民はみな、その耳にある金の耳輪をはずして、アロンのところに持って来た。彼がそれを、彼らの手から受け取り、のみで型を造り、鋳物の子牛にした。彼らは、『イスラエルよ。これがあなたをエジプトの地から連れ上ったあなたの神だ』と言った。アロンはこれを見て、その前に祭壇を築いた。そして、アロンは呼ばわって言った。『あすは主への祭りである。』・・・」(出エジプト記 32:1-4)

 ヤロブアムが行った主への礼拝規定の変更のあおりで職を失った本来の祭司とレビ人たちはユダに去っていきました。またごく一部の人々は、ヤロブアムの命令に従わずエルサレムに礼拝にゆきましたが、残りの人々はヤロブアムの命令に従いました。

 「イスラエル全土の祭司たち、レビ人たちは、あらゆる地域から出て来て、彼の側についた。実は、レビ人は自分たちの放牧地と所有地を捨てて、ユダとエルサレムに来たのである。ヤロブアムとその子らが、主の祭司としての彼らの職を解き、自分のために祭司たちを任命して、彼が造った高き所と雄やぎと子牛に仕えさせたからである。さらに、彼らのあとに続いて、イスラエルの全部族の中から、その心をささげてイスラエルの神、主を尋ね求める者たちが、その父祖の神、主にいけにえをささげるためエルサレムに出て来た。」(歴代誌II 11:13-16)

 ヤロブアムはソロモンが主に従い通さなかったために、「神が」ソロモンの王国を裂いて自分にくださったことを忘れました。

 「そのころ、ヤロブアムがエルサレムから出て来ると、シロ人で預言者であるアヒヤが道で彼に会った。アヒヤは新しい外套を着ていた。そして彼らふたりだけが野原にいた。アヒヤは着ていた新しい外套をつかみ、それを十二切れに引き裂き、ヤロブアムに言った。「十切れを取りなさい。イスラエルの神、主は、こう仰せられます。『見よ。わたしはソロモンの手から王国を引き裂き、十部族をあなたに与える。・・』」」(列王記I 11:29-33)

そして彼にはこういう約束が付け加えられました。

「もし、わたしが命じるすべてのことにあなたが聞き従い、わたしの道に歩み、わたしのしもべダビデが行ったように、わたしのおきてと命令とを守って、わたしの見る目にかなうことを行うなら、わたしはあなたとともにおり、わたしがダビデのために建てたように、長く続く家をあなたのために建て、イスラエルをあなたに与えよう。」(列王記I 11:38)

 ダビデは、彼のために長く続く家を神が約束されたことを忘れませんでしたが、ヤロブアムは目に見える事柄から、たちまち神のこのすばらしいお約束を忘れました。そして、国全体を神から引き離してしまいました。

(以下次号)
(仙台聖泉キリスト教会員)

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