読者の広場 <短歌>
— 寒風を突く —
鈴木 健一
前回までは、「日溜まりの窪」という言葉をめぐって、老人になった自らの心境を歌にしてきました。歌を作っているうちに、若い頃「日溜まりの窪」など積極的に否定しようとした記憶があることに気づきました。20歳から26歳までの仙台での6年間の下宿生活がそれです。母親から溺愛された私にとって、それは神様が下さった、自立への掛替えの無い時でした。温室でぬくぬくと浸るようなところから、寒風を心地よく感じるまでになったのでした。そのことを、連続して歌ってみました。
日溜まりの窪を 出づれば 風花(かざはな)飛ぶ 頬引きしまり 常にし戻る |
日溜まりの窪 見向きもせずに 若きらが 歩幅大きく 寒風を突く |
温(ぬく)とさを 厭(いと)ふに至りし 若き日よ 仙台の下宿 六度目の冬 |
(インマヌエル大宮キリスト教会 会員)