読者の広場 <短歌>
— 地震学の体験 —
鈴木 健一
大学は理学部の地球物理学科で、地震学を専攻しました。四年生になって研究室に所属すると、研究者の卵になったようでよい気分でした。教授から実験を命じられた助手の方のお手つだいをしたのも忘れられません。誰もいない深夜の研究室で、自動車の窓に使うような強化ガラスの真ん中をハンマーで叩いて割り、その後まわりがピシッピシッと細かく割れていく音を、テープレコーダーに録音するのです。それが、大地震の後の余震と同じなのではないかという仮定の下での実験です。自然科学というものの成り立ちを直に体験していくような貴重な体験でした。科学的なものの考え方の素晴らしさと共に、その限界をも教えられたような気がします。これも、私の自立のための基礎工事の一つでした。
市電の止まる 深夜を待ちて 計測す 強化ガラスの 破壊音の強弱 |
暁(あかつき)に 雀さわげば 計測止む 実験室の コーヒーの旨し |
新潟に 激震、 余震の 観測に 真夜(まよ)出動する 研究室(へや)のあわただし |
(インマヌエル大宮キリスト教会 会員)