読者の広場 <短歌>
— 関東大震災2 —
鈴木 健一
東京都慰霊堂の回廊の壁には、関東大震災の被災の様子を描いた油絵がかかっています。五十年ぶりに入って油絵の前に立った時、中学生の時見た戦慄の瞬間を思い出しました。それと共に、その後七十一歳まで、地震をめぐって貯えたもろもろの知識が、湧いてきました。戦慄をどう解釈するかが、どう生きるかにつながります。
関東大震災は、明治国家が形成され、世界の中で強国として認められることを望んで、登り龍のような気分でいるところを、直撃した災害でした。浅草の十二階建ての凌雲閣はそのシンボルの一つでした。今注目の、スカイツリーは、その浅草にごく近いところに再び聳え立っています。聖書を読む者にとって、バベルの塔を思い出さずにはいられない高さでもあります。
軒(のき)を撃つ 津波の白き 波頭 この絵記憶にあり 薄暗き堂 |
十二階建て 煉瓦造(れんがづく)りが 折れ崩れ ゆく油絵を 見上げ竦(すく)みき |
浅草の誇る 凌雲閣(りょううんかく)とふ 高層ビルディング 一瞬に崩れし 今なにも無し |
(インマヌエル大宮キリスト教会 会員)