巻頭言
— 感 謝 —
山田 行
「主は私の羊飼い。私は乏しいことがありません。
主は私を緑の牧場に伏させ、いこいの水のほとりに伴われます。
私は、いつまでも、主の家に住まいましょう。」(詩篇 23:1,2,6)
今年1月13日、私の母、山本和子伝道師が天に召されました。
仙台聖泉キリスト教会の方々はじめ多くの方々に支えられ、愛されて89年という長い人生を、幸いの中に終えることが出来ました。この場をお借りして、皆様に感謝の意を表させていただきたく存じます。本当にありがとうございました。
神が母の生涯にどのように関わってくださったか、告別式の時の故人略歴に的確に述べられていますので、ここに引用させて頂きます。以下その内容です。
故・山本和子先生は1933年4月25日、父・秋吉さん、母・やす子さんのもとに田中家5人兄弟の次女としてお生まれになりました。小中学生で戦中、戦後の時期を過ごされ、お姉さんはご両親のお手伝いのために、また弟さん・妹さんたちはまだ幼かったために、それぞれ家におかれたため、和子先生だけが一人親戚の家に預けられたそうです。そのため戦後落ち着いて来た頃にご家族のもとに戻されても、疎外感が強く、なかなか家族の輪に入れなかったそうです。
東京都立竹台高校在学中、友人から「田中さんはこの世で一番信頼できるものは何?」と聞かれ、「両親」と答えたそうですが、その友人から「でもお父さんもおかあさんもいつかあなたより先に亡くなられてしまうのよ」と言われ、いつまでも変わらずに信頼をおける存在を求めて、友人の導きに従ってインマヌエル綜合伝道団丸の内教会に通い始め、キリスト教に入信されました。
高校卒業を前にした11月23日、マタイ14章でキリストがペテロにかけられた「来なさい」という言葉が自分を招いておられると強く感じ、直接献身を決意され、神に全くお委ねする生涯を始められました。神学校在学中は、全く経験のなかったオルガンの練習や、失敗をすると全校生徒の前で謝罪させられた炊事などにとてもご苦労なさったそうです。
神学校卒業後は、丸の内教会に1年、船橋・千葉教会に6年、婦人伝道師として仕えられました。千葉教会では若い独身時代の和子先生が小さな伝道所にお一人で寝泊まりされ、夜になると訪ねて来る酔っ払いの対応などにご苦労されたそうです。
1960年10月、光明先生とのご結婚と共に盛岡教会に転任、翌1961年9月、長男の嘉納先生を出産されました。盛岡教会では雪の日、誰も来会者の無い礼拝をご夫婦二人だけで守ることもあったそうです。
その後、1965年に光明先生とともに仙台教会に赴任、同時に長女の行姉妹が誕生、1969年に次男の出先生が誕生し、2男1女の母となられました。
当時の仙台教会には野澤兄弟をはじめ若い兄弟たちが多くおられ、和子先生は光明先生とともに少なくとも12組の結婚を導かれました。
光明先生は生前、和子先生について「この人の牧会に任せても教会は成り立っていくだろうな、とは思ったけれども僕は立場上全部任せるわけには行かなかった」と言っておられ、和子先生のことを認めておられたように、先生は、しっかりとした牧会哲学を持ちつつも、引くべきところは引いて、夫である光明先生を支え、教会に仕えて来られました。厳しさを前面に出された光明先生に対し、和子先生は優しさと笑顔を前面に出され、いつも変わらぬ愛で信者皆をつつんでくださいました。その和子先生が時折見せる厳しいご指導の言葉は、驚かされるとともにとても効果的で良き導きを与えてくださいました。細やかな気配りでいつも信者の私たちの足りないところを補ってくださり、大切な信仰の局面に立っていく信者一人一人が、絶えず不足なく戦いに出られるよう整えてくださいました。
どちらかというと光明先生が、早く、説教や牧会の御用から身を引かれたのとは対照的に、和子先生はいつまでも現役でいようとしておられたように思います。いつも信者のことを気にかけ、祈っておられました。
そんな和子先生でしたが、晩年は認知症を患われ、病との戦いがはじまりました。最晩年は病状が重くなり、認知症専門の施設に入院、病床での生活が始まりました。あいにくのコロナ禍で面会がなかなか許されず、孤独な入院生活となってしまいましたが、和子先生を慕う私たちの多くの祈りに応えて、神は必ず最後まで和子先生のそば近くいらしてくださり、その献げられた生涯に報いて豊かな慰めを置き続けて下さったことを信じます。
最期は和子先生ご自身もコロナに感染され、今月13日夜、神の御許に召されました。89歳でした。
一切の栄光を神に帰し、謹んでご報告させていただきます。
この文章を是非、母も愛した「同労者」に残して頂きたいと娘として願いましたのでそのまま引用させて頂きました。
母の信仰者生涯が、試練の時、悲しみの時も神がひと時も離れず共に生きて下さったこと、また人が考えること、願うこと以上の喜びと恵と平安とを与え続けて下さった神に栄光を帰して感謝致します。