読者の広場 <短歌>
— 幼子3 通底する —
鈴木 健一
ある電車のなかでつり革を持って立っていると、前に坐っている小さな男の子が私を指差しながら、しきりに声を上げ始めました。まだ口の利けない年頃で、両側に坐っているお母さんもお祖母ちゃんも「なんなの」といいますが、意味が分かりません。不思議なことに私には瞬時に、この子は、「僕たちは直ぐ降りるから、この人に席を譲ってあげるのだ」と言っているのだと分かりました。お母さんとお祖母ちゃんに通訳してあげて、彼の精一杯の行為に感謝したことでした。いつの間にか私は幼子と、言葉以前の状態で、心が通じ合えるようになっていたのです。前に坐る 二歳児ぐらい
「あー、うー」と
われに呼びかけ 席を譲ると |
六十路(むそじ)すぎて
なぜか幼子 寄り来る
われが幼に 還る徴(しるし)か |
幼子の ごとくあらずば
入ることの 難(かた)き御国の
慕わしき夜 |
(インマヌエル大宮キリスト教会 会員)