聖書研究

—　万人祭司・万人予言者・万人王（第８２回）　—

野澤　睦雄

・・クリスチャンはみな預言者である。みな祭司である。また王である。キリストにあって、神は私たちを一体とし、そして王位に着けられた。
・・　Ｃ．Ｅ．ジェファソン（「教会の建設」から引用）

3.　新約における三つの職務の考察（つづき）
3.3新約の王（つづき）

　皆さんのキリスト教には、「他人（隣人）に・・させる」ということを、大切なものとする発想があるでしょうか。
　新約の世界に生きる私たちは、「・・させる」といってもその内容は、大変微妙で、本人の意志を引き出して「・・させる・」のです。パウロがピレモンに言ったことを引用しましょう。
「私は、彼（オネシモ）を私のところにとどめておき、福音のために獄中にいる間、あなたに代わって私のために仕えてもらいたいとも考えましたが、あなたの同意なしには何一つすまいと思いました。それは、あなたがしてくれる親切は強制されてではなく、自発的でなければいけないからです。」（ピレモン　１：１３－１４）
パウロはピレモンに自分の望みを「させる」ことに成功したと信じられています。この手紙のなかにパウロの工夫が記されています。私たちもそれをじっくりと考えてみる必要があります。
　さて、王は、
・自分の支配下にある人々を組織し、
・法律を定め、
・組織した人々を使って実行（行政）させます。
・法に反するものを取り締まり、処罰します。（司法）
・租税を定めて徴収します。
・また軍隊を組織し、外国から国を守ります。（軍事）
・組織の人々が、それぞれの役割を果たすために必要な訓練、たとえば軍ならば軍事の訓練というように、をします。（教育）
　まず組織というものについて考えましょう。ある団体が、団体としての力を発揮するためには、組織が重要なひとつの要素になります。
教会という団体もその例に漏れません。家庭という団体も同様です。
教会は人の体に例えられています。
「確かに、からだはただ一つの器官ではなく、多くの器官から成っています。」（II　コリント　１２：１４）
教会はそこに集まっている人の数や力によって、牧師、伝道師、宣教師、役員・長老、教会学校教師、伝道活動のための文書や放送やインターネットなどの情報通信機器を通しての活動をする人々、音楽の奏楽者、音楽のバンド、スポーツや趣味に関する様々の事柄のチームやその役割を担当する人々、その他を持つようになるでしょう。教会は、集会をするのも、トラクト配布も、家庭訪問も週報を作ったり、集会場の掃除に至るまで全部先生ひとりではじまるかもしれません。しかし、その教会に救われた人々が加わってきたとき、先生の仕事を一緒に担う人々があらわれなかったら、力ある教会になるはずがありません。しかし、信者は適切な導きをするなら、先生と一緒に働く人々になるでしょう。
　これらの活動をする人々がどのように組織したらよいでしょうか。教会の活動に加わる人々は、体の器官が自然に造られるように、自然にそれぞれが分担する仕事の領域に分かれていきます。自然発生的であると同時に、牧師はよく見張っていて、その生まれてくる組織に手を加える必要があります。さもないと荒れ放題の庭といったものになります。
　牧師自身はどういう働きをするのでしょう。役員・長老はどういう働きをするのでしょう。教会学校教師はどういう働きをするのでしょう。その役割をはたすための必要な知識・技量はなんでしょう。どのようにしてそれを身につけるでしょう。
　教会は＜神の教会＞なのです。教会の働きをする人々を神が必要としておられます。本人がわかっていないこともありますが、分かっていてもいなくても、神がその働きにその人を任命されている、それがその人の使命であることが大切です。その使命を果たすために、自分はどんな努力・工夫が必要であるか、考えてそれを実行し、必要な知識・技量を獲得するならば、神の必要に「間に合う」ものとなれますが、それを怠ると、形だけその席に座っている人になります。殊に教会にいた年数だけで役員になった人々は要注意です。自分の使命をよく考えましょう。
　牧師は、ある人々を任命し、ある人々を更迭して組織に手を加え、生きた組織を作り上げなければならないのです。それとともに、役員、教会学校教師、以下さまざまな働きを担う人々を指導教育して、その使命を果たすために「間に合う」人々にする必要があります。牧師は教会の王を勤めなければなりません。神がその使命に任じられたのですから。教会員を好き勝手にさせておいたなら、サウルと同じ叱責を受けることになるでしょう。
「サムエルは言った。「あなたは、自分では小さい者にすぎないと思ってはいても、イスラエルの諸部族のかしらではありませんか。主があなたに油をそそぎ、イスラエルの王とされました。」（I　サムエル１５：１７）
そして、パウロがピレモンに自分の望みを果たさせたそのスタンスで、教会の人々を神のために働かせなければなりません。