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ショートコラムねだ

— エネルギー革命の予感 —


  今回は世のニュースを紹介しましょう。
 世界にエネルギー革命が起きる事態があまり騒がれずに進行しています。
 以前「常温核融合」と呼ばれて、世界中の騒ぎになった技術がその発端であって、今では「凝縮系核融合」と呼ばれています。
先日テレビで紹介していましたが、だめだった事例や、特許取得を急ぐあまりねつ造データをもとに論文をだした、といった事件ばかり取り上げ、最後に東北大学の教授の「再現性は100%あります。連続的に発熱させることに成功しています。」と述べていることを、ほんのひとこと紹介しただけでした。ですからテレビを見ていてもそれに注意を払うことができなかったひとは、だめ技術、にせ技術だと思ったことでしょう。

 原子力といっているもの、つまり核エネルギーは、物質の質量とエネルギーが等価=同じもの、であるということを見いだしたことにはじまります。一つの物質が二つ以上に分裂したとき、質量が減るものがあります。その減った分の質量がエネルギーに変わります。それが核分裂反応によるエネルギーで、広島の原爆ではわずか0.7gの質量が減ってエネルギーに変わったのだそうです。核分裂反応のエネルギーが利用されるようになり、ご存知のように原子力発電がおこなわれています。

 この技術には放射性廃棄物というとんでもないつけが残ることが明らかになってきました。最後に1000年も2000年もそれを保管しておかなければなりません。だれがそんなことを続けられるでしょうか。きっといつか忘れられ、漏れ出すに決まっています。

 さて、核エネルギーにはもうひとつ、二つの物質がひとつの物質に変わる融合反応という変化があります。その場合でも、質量が減るものがあり、減った分がエネルギーに変わります。そのひとつが2個の重水素(普通の水素は原子核1個ですが、原子核のほかに原子核と同一の質量の中性子がついていて、普通の水素の2倍の質量をもっています。)が、1個のヘリウムに融合します。そのとき元の2個の重水素より質量がへり、エネルギーに変わります。
その技術も早速兵器に使用され水素爆弾が製造されました。

 核融合のエネルギーも、核分裂のエネルギー同様、利用しようと試みているのが、プラズマ方式です。プラズマというのは原子核を全部ばらばらに壊したもので、それをもう一度新しい物質に融合させようとしています。しかしその温度領域は100万度とも言われる高温で、強力な磁場の中にプラズマを閉じ込めておかなければなりません。そのコストを考えたら、とても実用にはならないだろうと私には思われます。

 しかし、そのような設備を使わず、常温のビーカー実験で、重水素の核融合反応が起きたと思われる、実験結果が起きたのです。金属には水素吸蔵合金(ニッケルとパラジウムの合金など)というものがあり、その金属には水素が原子の形でどんどん詰まるのです。アメリカのボンズというひとの実験で、その水素吸蔵合金に重水素をどんどん詰め込む方向に電流を流し続けたら、ビーカーが破損するほどの熱が発生し、そのエネルギーは流した電流のエネルギーよりも遙かに大きいと推測されました。ほかにどこからもエネルギーの発生源がないので、水素吸蔵合金の中で重水素が融合してそのエネルギーとなったと考えたのです。
 先にのべましたように、特許取得競争が起き、追試がたくさん行われましたが、再現できませんでした。それでこれは偽技術と決めつけられました。

 しかし、手段をいろいろ変えながら、こつこつと研究を続けたひとびとがおり、ついに実用の段階に近づいています。
「おいらはボイラ」という宣伝文句で知られている三浦ボイラーと、クリーンプラネットというベンチャー企業で東北大学と連携している会社が「量子水素エネルギー」を利用したボイラーを、2年後、2023年に実用化とプレスリリースしています。
「凝縮系核融合」といわず、「量子水素エネルギー」と呼ぶことにしたようです。
 東北大学の実験室は、仙台市太白区の三神峯にありますが、公開されている実験装置は、人間の背丈同等くらい大きさで、鉛の壁の遮蔽などありません。
 つまり放射線の心配がない、ということでしょう。
もうひとつ、出力が水素原子を押し込む電流に依存していて、反応が起きる限界量である臨界は存在しない。従来の核エネルギー利用では、反応が継続する臨界をこえなければいけないし、そうなると、制御しないと、連鎖反応が続けて起こり爆弾になる心配がありました。
しかし凝縮系核融合では、万一停電等の場合、装置が停止するだけです。
これらがこの技術の決定的に重要な点です。 水素吸蔵合金のナノサイズの薄層に水素を詰め、加圧、加熱するというものです。運転温度は800℃から1000℃くらいのようです。
ナノというのは1ナノメートル(nm)のことで、1000分の1ミクロン(μ) とてつもなく小さい領域ですが、日本ではそれを作り出す技術があります。
 重水が融合してできるヘリウムが確認されているとのこと、核融合反応が起きていることは確実と思われます。

 ガソリンエンジンに変えて電池で動く自動車も水素燃料電池で走る自動車、水素を燃料とするエンジンで走る自動車、いずれも町中に、炭酸ガスをまき散らさないだけで、発電の時クリーンであり得るか、水素を作り出すときクリーンであり得るか、その割合はどのくらいか、不都合な真実、などのタイトルで小さく報道されていますが、その心配がなくなるでしょう。 

 この凝縮系核融合がたくさん使われるようになったら、エネルギー革命が起こることはいうまでもありません。それが、あまり騒がれないところで進行しています。