同労者

キリスト教—信徒の志す—

ショートコラムねだ

— モーセの十二の石 —


「そうしてモーセは、翌朝早く、山のふもとに祭壇を築き、またイスラエルの十二部族にしたがって十二の石の柱を立てた。」(出エジプト記 24:4)

 先にヨシュアが立てた十二の石についてこのコラムに書きましたが、モーセも十二の石の柱を立てたのです。こちらは、イスラエルの民が十戒をはじめとする律法を受け、神と契約を結んだことと関係しています。モーセが神から十戒を記した石の板をいただいたことと、十戒のことばはよく知っていても、それが与えられたいきさつには案外注意を払われていないのではありませんか。
神はモーセに律法を授けられました。出エジプト記19章3節~24章4節にそのことが書かれています。十戒はそのなかの20章に書かれています。つまり石の板をいただく前のことです。
モーセは民に律法を読み聞かせ、民はそれをことごとく行いますと誓いました。(出エジプト記 24:3,7)
それからモーセは冒頭に引用しましたみことばのとおり祭壇を築き、十二の石の柱を立てました。この十二の石の柱は、イスラエルの民全部が神との契約に加わったことを示します。
祭壇に犠牲が献げられ、血による契約が結ばれました。
「・・そこで、モーセはその血を取って、民に注ぎかけ、そして言った。「見よ。これは、これらすべてのことばに関して、主があなたがたと結ばれる契約の血である。」」(出エジプト記 24:8)
それからモーセはシナイ山に登り、四十日四十夜山にいました。
「モーセが山に登ると、雲が山をおおった。主の栄光はシナイ山の上にとどまり、雲は六日間、山をおおっていた。七日目に主は雲の中からモーセを呼ばれた。主の栄光は、イスラエル人の目には、山の頂で燃え上がる火のように見えた。モーセは雲の中に入って行き、山に登った。そして、モーセは四十日四十夜、山にいた。」(出エジプト記 24:18)その間モーセは食べも飲みもしない断食祈祷をしたのです。彼はそれを申命記に証ししています。
「私が石の板、主があなたがたと結ばれた契約の板を受けるために、山に登ったとき、私は四十日四十夜、山にとどまり、パンも食べず、水も飲まなかった。その後、主は神の指で書きしるされた石の板二枚を私に授けられた。」(申命記 9:9-10) モーセが山にいる間に、アロンが金の子牛の像をつくり、民はそれを拝みらんちき騒ぎの祭りを行っていたので、彼は神から頂いた十戒を記した石の板を砕いてしまいました。
それで神はイスラエルの民を滅ぼし、代わりにモーセからでる民でやり直そう、とモーセに言われました(出エジプト記 32:9)が、モーセの執りなしを聞き入れそれをやめました(出エジプト記 32:14)。
しかし神はもうわたしはおまえたちと一緒に行かない。代わりに天使を派遣するといわれました。
「主はモーセに仰せられた。「あなたも、あなたがエジプトの地から連れ上った民も、わたしがアブラハム、イサク、ヤコブに誓って、『これをあなたの子孫に与える』と言った地にここから上って行け。わたしはあなたがたの前にひとりの使いを遣わし、わたしが、カナン人、エモリ人、ヘテ人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人を追い払い、乳と蜜の流れる地にあなたがたを行かせよう。わたしは、あなたがたのうちにあっては上らないからである。あなたがたはうなじのこわい民であるから、わたしが途中であなたがたを絶ち滅ぼすようなことがあるといけないから。」」(出エジプト記 33:1-3)
神がともに行ってくださらないということは、祭壇も石の柱も契約もないにひとしくなります。ですからモーセは必死に神にすがり、一緒に行って下さるように願いました。
神はモーセの願いを聞き入れ、
「すると主は仰せられた。「わたし自身がいっしょに行って、あなたを休ませよう。」
(出エジプト記 33:14) と言われました。
 モーセはもう一つ「神ご自身を見たい」と願いました。神はそれをも聞き入れましたが、ご自身が通り過ぎるとき、岩の裂け目に彼を入れ、後ろ姿だけをお見せになりました。(出エジプト記 33:18-23)
「千歳の岩よ 我が身を囲め」と歌っている讃美歌がありますが、その歌の岩、神が通り過ぎるときにモーセを隠した岩をキリストとみているのです。
神はモーセが砕いた石の板に代えて、もう一度契約の石の板をくださいまいました。
「主はモーセに仰せられた。「前のと同じような二枚の石の板を、切り取れ。わたしは、あなたが砕いたこの前の石の板にあったあのことばを、その石の板の上に書きしるそう。朝までに準備をし、朝シナイ山に登って、その山の頂でわたしの前に立て。だれも、あなたといっしょに登ってはならない。また、だれも、山のどこにも姿を見せてはならない。また、羊や牛であっても、その山のふもとで草を食べていてはならない。」そこで、モーセは前のと同じような二枚の石の板を切り取り、翌朝早く、主が命じられたとおりに、二枚の石の板を手に持って、シナイ山に登った。主は雲の中にあって降りて来られ、彼とともにそこに立って、主の名によって宣言された。・・」(出エジプト記 34:1-10)
この時モーセはもう一度四十日四十夜の断食祈祷をしました。
「私は最初のときのように、四十日四十夜、山にとどまった。」(申命記 10:10)
 こうして、祭壇も石の柱も契約もむなしくなることがなく、イスラエルはイエス・キリストがこの世においでになる通り道となることを果たしました。

 「イスラエルよ。今、あなたの神、主が、あなたに求めておられることは何か。それは、ただ、あなたの神、主を恐れ、主のすべての道に歩み、主を愛し、心を尽くし、精神を尽くしてあなたの神、主に仕え、あなたのしあわせのために、私が、きょう、あなたに命じる主の命令と主のおきてとを守ることである。」(申命記 10:12-13)