読者の広場 <短歌>
— 大震災(5) —
鈴木 健一
人の極限状況を思う時、私の心はやはり自らの体験に沈潜してゆきます。1945年3月10日の東京大空襲とその後の焼け跡の生活は、幼児であった私の心の奥底に、ただれたものとして残っています。しかしそれ故に、被災地の子どもたちが瓦礫の空き地で遊び始めたという報道に触れたとき、同じだなあという思いになりました。
またこのような大規模な災害は、当然政府レベルの対応が欠かせません。懸命に対応している姿が連日テレビで放映されました。しかしいくら一生懸命やっても、現実とのギャップは埋まらないのだということも、また体験させられたことでした。
瓦礫(がれき)の岸に 小道通りぬ 幼き日 疎開(そかい)より戻りし 本所の焼け跡 |
語られざる こと多からむ 原子力発電所(げんぱつ)事故 官房長官の 歯切れよけれど |
語られざる 間にも漏れ出す 放射線 汚染の水が 豊饒の海に |
(インマヌエル大宮キリスト教会 会員)