読者の広場 <短歌>
— 近況 2 芝川 —
鈴木 健一
わたくしの家は台地の上にありますが、6メートルほど坂を下ると、広々とした見沼の湿地帯が広がり、芝川が流れています。
十年以上前まで、芝川には家庭排水がそのまま流れ込み、フナもザリガニも棲めないドブドロな死の川でした。流れの脇に下水の本管が埋められ、下流に浄水所ができると、三年ほどで、魚の姿(影)がみられるようになりました(一首目)。
もうこの土地に四十年以上住んでいますので、この川の風景は私の内面の一部です。水かさが増せば、夕べの雨を思います(二首目)。
たまたま夜一人で橋を渡らなければならない時などは、川は昼間ののどかな光景とは異なった、心の奥を揺さぶるような姿を見せることもあります。それはまた、その時の私自身の心が揺れている姿でもあります(三首目)。
仲橋の上より 魚かげ透ける 川もどる 下水本管 通りて十年 |
怖きほど 水かさ上る にごり川 真夜(まよ)音たてて 雨ぞ降りたり |
先見えぬ 土手をふるはせ 黒々と 押し流れゆく 闇の夜の川 |
(インマヌエル大宮キリスト教会 会員)